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国際貿易データを基礎とした貿易指数と国際比較・分析

調査研究報告書

野田容助、木下宗七、黒子正人 編
2011年10月発行
序章
貿易指数の作成と国際比較・分析における諸課題 pdf (551KB) / 野田容助、木下宗七、黒子正人
はじめに
1. 国際貿易データの特徴とその利用
2. 貿易指数の作成、評価および国際比較
3. 貿易指数に見る技術選択
4. 本書の構成
おわりに

本調査研究報告書は貿易指数の作成と応用にかかわるいくつかの課題をまとめたものである。主要な課題は3つから構成されている。(1)国際比較のための長期時系列貿易統計データの整備および整合性の補正であり、貿易データについての使用上の問題点や留意点を指摘する一方で、その問題点を如何に利用する立場から解決していくかを具体例を挙げて紹介している。これらの課題に対応するのは第1章と第2章である。(2)貿易指数の作成と評価、国際比較と分析であり、これらの課題に対応するのは第3章から第5章である。(3)技術変化の動向を考慮した貿易構造の把握であり、これらの課題に対応するのは第6章から第8章である。本章は本書の総論であり、(1)から(3)の課題について概観し、各章を概要している。


第1章
はじめに
1. 各国の貿易統計とComtrade
2. 貿易統計と品目分類
3. HSの品目改訂とComtradeデータ
4. Comtradeの貿易数量統計の問題点
おわりに

United Nations Commodity Trade Statistics Database(通称Comtrade)には大半の国連加盟国の輸出入統計が相手国と商品分類別に整理された形で収録されており、ユーザーが必要なデータを迅速に収集できるよう工夫が施されている。最近は国際物流の円滑化や海外との生産工程分業を促進する国が増えていることもあり、Comtradeの詳細な貿易統計を駆使した研究が増加している。ただし実証研究においてComtrade を適切に利用するためには、ユーザー側に貿易統計に関する一般的な知識とComtradeデータの特性に関する理解が必要である。
たとえば中継貿易が盛んな国や国連の勧告に準拠した貿易統計を作成していない国に関しては、Comtradeに収録されたデータが実態を適切に反映しているか、他の国々と比較可能なデータになっているかどうかを検証する必要がある。また、Comtradeデータは国際的に広く認知された統一システム(HS)などの商品分類にもとづいて提供されているが、HS は必ずしも十分に詳細でない上に定期的な改訂が実施されている。Comtradeには各国から報告された統計をUN 統計局が旧版のHS の商品分類に組み替えた統計も収録されているが、後者のデータでも時系列的な連続性が十分に確保されているとは限らず、使用時には注意が必要である。最後に、Comtradeの輸出入数量のデータには当該国の原統計に忠実でないUN統計局の推計値が相当数含まれている。多くの国々はHS の商品分類の下部にさまざまな独自の分類を設けており、これら小分類の数量単位が異なっているとHSの品目レベルの数量統計が得られない。そのような場合、UN統計局は機械的な方法で基準となる輸出入単価を算出し、名目輸出入額をそれらの単価で除すことによって数量データを推計している。しかし、財の多様性が高い機械機器やその中間財に関する国連の推計値は実態から乖離している可能性が高く、それらを無批判に実証研究に利用することは控えるべきである。


第2章
はじめに
1. 商品分類を変換するために必要な対応関係コード表
2. 商品分類を変換するための配分ウエイト行列の推計
3. 貿易データにおけるSITC-R1への変換
おわりに

貿易データを共通の商品分類概念で長期時系列に利用するためには、商品分類の改訂された前後のどちらかの商品分類に統一することが必要である。本章は商品分類の改訂に伴なって生ずる商品分類の違いを接続するため、新旧商品分類コードから構成される対応関係コード表の構造と両分類の取引額を考慮して、両者の対応関係の配分ウエイトを推計し、それに基づいて貿易データを変換する方法を示している。本章で試みている変換方法は新商品分類コードが旧商品分類コードの複数個に対応しているときにはその配分構造に従って推計していることに特徴がある。この方法により貿易データの変換にはすべての報告国に対して一律に同一の対応表が適用されるのではなく、報告国ごとに推計された配分ウエイト付きの対応関係コード表の適用が可能となる。


第3章
貿易価格指数の作成と評価 pdf (763KB) / 木下宗七、黒子正人
はじめに
1. 貿易価格指数の作成状況と先行研究
2. 貿易価格指数における単価方式と調査価格方式の比較
3. 貿易単価指数と商品分類の水準
おわりに

貿易価格指数を作成するための価格データとしては、単価(unit value)と調査価格(survey prices)がある。本章では、単価に基づく貿易価格指数(貿易単価指数)の特質を2つの面から評価した。1つは、共通の商品分類について貿易単価指数と調査価格による指数が利用できる国について、それらの指数の時系列特性を比較し、調査価格による指数を基準として貿易単価指数のパフォーマンスを評価することである。もう1つは、貿易単価指数の性質を価格指数算式や単価推計に用いられる商品分類の水準(SITCの5桁、HSの6桁)の選択と結びつけて評価することである。評価の結果、品質一定のもとに調査された調査価格による指数と比べると、貿易単価指数はトレンドに開きが見られ不規則的な変動が多いこと、しかし、商品分類の桁数を増やすと、貿易単価指数のもつトレンドや変動でのバイアスは、一定の範囲で修正できることが明らかになった。


第4章
はじめに
1. Gravity Equationと貿易結合度(Index of Trade Intensity)
2. 輸出結合度と輸入結合度
3. 貿易結合度の問題点と修正貿易結合度
4. 貿易結合度の問題の例示
5. 修正貿易結合度と使用上の注意
6. 貿易結合度の上方バイアス
7. 貿易結合度の使用が望ましい場合
8. 国と地域が混在する場合の結合度の選択
9. 貿易結合度と修正貿易結合度の実例
おわりに

二国間の貿易関係の強さを分析する際に用いられる指標として、貿易結合度(TradeIntensity Index)がある。しかしながら、貿易結合度を算出する際に、分母となる世界貿易量から自国の貿易量を差し引くかどうかについては、よく議論が行われないままとなっている。本論では、自国貿易量を差し引く場合の指数を「修正」貿易結合度と呼び、自国貿易量を差し引かない貿易結合度と比較して、指標として優れていることを示す。


第5章
はじめに
1. 商品・サービス輸出と産業別の輸出比率
2. 産業別の価格変化
3. EU KLEMSデータベース(韓国)における産業別全要素生産性の計測
おわりに

1993~2005年の韓国において電気・光学器具製造業、他に分類されない機械製造業、化学、化学製品製造業、輸送機械製造業による商品輸出が急増した。これらの貿易財産業において、輸出比率と多くの商品の顕示比較優位指数は上昇した。また、非貿易財の貿易財に対する相対価格は上昇した。以上から、貿易財産業における非貿易財産業を上回る技術進歩が、貿易財に関する一物一価の法則の成立と労働の可動性による名目賃金均等化の仮定の下で、非貿易財の相対価格と一般物価上昇をもたらす、バラッサ=サミュエルソン効果が働いていた可能性がある。そこで、本章は、EU KLEMSデータベース(韓国)に基づき、貿易財・非貿易財産業に属する各産業における全要素生産性と価格の変化を検証した。その結果、貿易財産業では非貿易財産業に比べ、全要素生産性上昇は高く、価格上昇は低い傾向があったことが見出された。


第6章
はじめに
1. RCA指数の作成とその特徴
2. レオンチェフ指数とリーマー指標の作成
おわりに
附表

本章の目的は貿易指数のひとつとして国際競争力の尺度として利用される顕示的比較優位指数(Revealed Comparative Advantage:RCA)と貿易に体化された資本・労働量として計測されるレオンチェフ指標(Leontief)とリーマー指標(Leamer)についての概要および作成方法とその特徴を紹介することである。
本書の第7章はRCA指数とレオンチェフ指標の応用例として技術選択が、各国の生産様式など、歴史的背景によって行われていると想定し、このような現象を技術選択によって説明している。本章ではその準備のための基礎データ作成とそれに関わる必要事項を前もって説明する。


第7章
RCA指数の逆転と技術選択 pdf (644KB) / 吉野久生
はじめに
1. 経済発展と貿易
2. 技術選択
3. RCA指数の逆転
4. RCA指数逆転の例
おわりに

Yeats[1985]は顕示的比較優位指数(RCA)の逆転について指摘を行っている。韓国の鋼板のRCA指数は世界的にもかなり高い順位にあり、製紙業を上回るが、国内の順位は製紙業の方が上である。また特に欧州諸国においてこのような現象が頻繁に見られる。本章では、このような逆転現象がなぜ発生するのか、その原因の解明を試み、それは、各国に固有の技術選択が存在するからであるという想定で分析を行った。ここでは、技術選択は価格メカニズムによって行われるものではなく、各国の生産様式など、歴史的背景によって行われているものとした。比較優位が軽工業にありながらも、高付加価値部門も持つ韓国と、一人当たりGDPは韓国よりも高いながら全般的に資本蓄積が小さいポルトガルをレオンチェフ指数を用いて比較した。


第8章
はじめに
1. 国際競争力と生産性の変化:分析の枠組み
2. インパルス応答関数から読み取れるTFPとRCAの関係
3. アジア農業の発展経路
4. 国際競争力の産業間比較
おわりに

本章は国際競争力の程度を表わすRCA指標が、途上国の主要産業である農業生産部門の発展とどのような関係にあるのかを考察することを目的として、一国の経済の国際競争力の変化と総合生産性(TFP)の推移との関係を考察している。アジア諸国の農業部門を分析対象として1960年代から2000年代までの時系列データとVAR モデルの手法を用いた経済分析が行なわれた。国ごとにRCA指標の推移とTFP指標の変化の関係は異なり、詳しい関係を理解するためには、国別にさらに詳しい要因分析を行う必要があることも確認された。タイにおいて生産された農産品と機械類のRCA指標の推移の比較から、ヘクシャー・オリンの定理が意味する「相対的に労働が豊富な国は労働集約財を輸出し、資本が豊富な国は資本集約財を輸出する。」という単純な図式では、実際の経済発展のプロセスと国際競争力の推移を説明できないことを示した。


附表1:国・地域におけるISOコード(UN国コード)とその名称
附表2:SITC-R1における3桁レベル分類コードとその名称