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技術者と産業発展

調査研究報告書

佐藤幸人安倍誠・大原盛樹  編
2009年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
佐藤 幸人 編『アジアの産業発展と技術者』研究双書No.589、2010年発行
です。
第1章 
東アジアの産業発展における技術者の役割を明らかにする上で,産業発展の先行者である日本の事例について検討することは有用である。明治初期から高度成長の初期段階までを対象とした経済史・経営史研究における技術者に関する諸研究を,「高等教育と技術者層の形成」,「技術者出身の経営者」,「技術者と現場主義」,「研究・技術開発と技術者」という論点から整理する。

第2章 
技術者の養成機関として高等教育機関に着目し,戦後韓国の高等教育政策を概観した後,特に工学系高等教育の特徴について,代表的な大学工学科であるソウル大学工科大学の発展,大学ごとの専門化政策,工業専門大学の創設理念とその後の展開を論じる。

第3章 
本章では台湾の産業発展における技術者の役割について分析するための予備的な作業をおこなった。明らかになった点は以下の通りである。

第1 に、台湾では学歴の高度化が進んでいる。工学教育に関しては、1990 年代に「専科」から大学に重点がシフトした。

第2に、台湾の研究開発は、投入面、産出面ともに発展が継続している。

第3に、工研院の役割に関しては進化論的なアプローチからの分析が必要である。工研院の台湾の産業技術の発展に対する貢献は広く認められている。特にスピンオフが重要な役割を果たしたこともよく知られている。しかし、成功という結果から後知恵的に分析する傾向があるため、そのプロセスは十分かつ正確には理解されていない。幾つかの事例から明らかになったことは、実際の過程は試行錯誤に満ちていることである。また、環境の変化にともない、スピンオフの形態も変わってきている。

第4章 
技術者を研究開発(R&D)に従事する科学・技術的専門家ととらえると、国際的に比較がある程度可能な統計データが公表されている。本章は、中国において形成された技術者層の全体像を、それを使って概観する。国際的に見ると、人口の膨大さを背景にして、技術者の量およびR&D 活動の規模は世界最大クラスとなった。政府系研究機関と政府経由の資金の重要さ、基礎研究の少なさと開発活動への集中、学術活動と企業の強い結びつき、というのが中国の技術者をめぐる舞台の特色だと考えられる。2000 年以降、高等教育の急激な拡大し、技術者層のベースはさらに膨大なものになった。近い将来、世界のイノベーション活動の強力な一角を形成する勢力になる可能性が高い。