skip to contents.

国際安全保障における地域メカニズムの新展開

調査研究報告書

望月 克哉 編
2009年3月発行
はじめに pdf (46.2KB)
目次 pdf (11.3KB)
執筆者紹介 pdf (6.34KB)
第1章
はじめに 本稿の目的と射程
第1節 『People, States and Fear』におけるRSC 概念の提起
第2節 『Regional Orders』による批判的考察
第3節 『Security: A New Framework for Analysis』にみる新たな展開
第4節 むすびにかえて-『Regions and Powers』および若干の分析


国際安全保障の地域レベルの分析における唯一の「理論」とされる、regional security complex概念(理論)について、『People, States and Fear』、『Regional Orders』、『Security: A New Framework for Analysis』および『Regions and Powers』での議論の整理を中心に、概念の発展と理論化を検証する。最後に今後の論点の提起を行い、相当の理論的、事例的蓄積と、興味深い論点が提示されてきたにもかかわらず、同概念を看過してきた現状の問題点を指摘する。

第2章
はじめに アジア太平洋の安全保障秩序
第1節 安全保障構造(アーキテクチャ)に関する一般的考察
第2節 アジア太平洋の安全保障構造をめぐる動向
第3節 「中国の台頭」とアジア太平洋地域における安全保障構造


アジア太平洋地域の安全保障構造は、米国との二国間安全保障関係(ハブ・スポークス)を基礎としながらも、各種二国間・多国間の安全保障関係の構築、準地域的枠組みの形成と深化、アドホック枠組みの機能主義的適用、全域的協力枠組みからなる、重層的な構造へとその性格を変化させている。

(1)「ハブ・スポークス」関係がネットワーク化した構造として発展していること(日米韓・日米豪・<日米印>・<日米豪印(提案)>・米と東南アジアの軍事演習のマルチ化)、(2)準地域的枠組みによる特定の問題領域の解決、紛争予防、軍事演習が形成されていること(六者協議<将来の北東アジア安全保障構想?>・上海協力機構)、(3)アドホックな問題領域における安全保障協力が発展していること(拡散安全保障イニシアティブ、対テロ協力、大規模災害に関する協力、海賊・国際組織犯罪への協力、公衆衛生・パンデミック、エネルギー安全保障等)は、アジア太平洋地域における安全保障構造が、かつてよりもはるかに複雑化・深化していることを意味している。

第3章
はじめに
第1節 国際政治における介入:分析の手がかりとして
第2節 中央アジア国際秩序をどう捉えるか
第3節 ロシア主導の枠組みによって形成される「影響圏」
結びにかえて


ロシアはソ連解体以来、安全保障や経済にかかわる多国間の協力枠組みをこの地域で主導してきた。その一方、影響圏ないしそれに類似した概念を用いて、この地域への行動・政策を一貫して正当化してきた。この非ウェストファリア的な概念はロシアにとっては伝統的な対外政策を体現するものである。旧ソ連・中央アジア諸国を含むユーラシア内陸部における地域メカニズムを理解するうえで、このようなロシアの政策的意図の把握は不可欠である。とはいえ、かつての宗主国・ロシアの介入の手段と能力は低減していることにも留意しなければならない。

第4章
第1節 序論(本研究のねらい)
第2節 1990年代の米州関係の展開
第3節 対米関係のきしみ
第4節 アメリカを外した地域連携の模索
第5節 中小国の左派政権と地域連携
第6節 米州の安全保障課題とラテンアメリカのおける地域連携

本章は、ラテンアメリカにおける新しい地域連携と安全保障秩序との連関の構図を明らかにすることを最終的な目的としている研究の中間報告であり、地域連携の動向と中小国が直面している問題に主要な焦点を当てる。


米州では2000年代に入ってからアメリカとラテンアメリカの離反が露になり、それとともに、ベネズエラの主導による「米州ボリバル代替構想」(ALBA)、ブラジルの主導による南米統合(南米サミットから南米共同体へ、さらに南米諸国連合(UNASUR)へと発展)という新しい地域連携が見られる。この2つの地域連携は利害が一致することもあるが、地域統合の主導権を争って対立することもあり、その力学は交錯している。

そうしたなか、ボリビアやパラグアイといった中小国は、複雑に絡む損得を計算してこれに対応することを強いられている。たとえばこの2国が左派的な改革政策を進めようとすると、経済関係が緊密なブラジルの権益を脅かし、同国からの圧力を受ける。一般に米州の地域秩序は「アメリカ」対「反米左派」の図式でとらえられることが多いが、中小国に作用するブラジル・ファクターについても十分に注意を払っておかなければならない。

第5章
はじめに
第1節 APRMとそのプロセス
第2節 ピア・レビューの結果とこれをめぐる問題点
おわりに


アフリカン・ピア・レビュー・メカニズムとは、アフリカにおける自己監視を目的として、アフリカ連合(AU)加盟国により自発的に導入された仕組みであり、政治的安定、経済成長、持続的開発、地域経済統合に資する政策、法制等の推進を目指すものとされている。2002年のAU首脳会議での合意をうけて、翌2003年のアフリカ開発のための新パートナーシップ(NEPAD)首脳実行委員会で覚書を採択、署名が開始され、2008年までにアフリカ53カ国の半数を超える国々がこのメカニズムを開始した。基本文書とそれに基づく組織体制が整備されている反面、実際のレビューの手続が煩瑣かつ複雑であるとされ、この点で2004年に開始された国別の基礎レビューの進捗はかんばしくない。運用面での遅滞の原因としては、手続的な問題にとどまらず、既存の地域機構を土台とするメカニズムとしての内在的要因が横たわっている。それらを検証する作業を通じて、地域メカニズムとしてのAPRMの現状と課題について考察する。