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WTO加盟と資本財市場の誕生 —ロシアとベトナムの事例—

調査研究報告書

水野 順子 編
2008年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
水野 順子 編『新興諸国の資本財需要 ロシアとベトナムの工作機械市場』アジ研選書No.21、2010年3月18日発行
です。
はしがき pdf (317KB)
序章 pdf (257KB) / 水野 順子
はじめに
1. 資本財とは、
2. 伝播した技術のネットワークを分析する
3. 本書の構成


本報告書の分析の仮説である「WTO加盟型の高度成長」について説明し、分析の対象である資本財の定義を確認する。また、本研究会が技術のネットワークに注目している点について説明する。

最後に本報告書の各章を要約して説明しガイドとする。第1章は、ロシアの高度経済成長は、主に石油輸出価格の上昇に影響され始まったものであると説明する。第2章は、工作機械を需要する資本財の市場やメーカの状況について述べている。第3章は、ロシアの人材について述べている。第4章は、ロシア工作機械産業の現状と技術について分析する。第5章は、ベトナムの高度経済成長は、外国直接投資の役割が大きいことを説明する。最後にまとめて結論としている。

第1部 ロシア
第1章
ロシアの高度経済成長要因 pdf (73KB) / 水野 順子
はじめに
1.1. 経済成長を説明する要因
1.2. 国内市場の形成
1.3. 外国直接投資
1.4. 直接的産業政策
1.5. 成熟した内需


第1章は、ロシアの高度経済成長のパターンを検証している。ここでは、ロシアのGDPの成長率が1999年にプラスに転じたのは、金融危機の結果通貨が暴落し、輸出(その主な品目は石油である)が伸びたことが大きく寄与しているとしている。そのことは、直接投資が高度経済成長のスタートになるという「WTO加盟型の高度成長」仮説を必ずしも支持していない。ロシアでは、石油輸出額の増大が外貨収入をもたらし、それが高度経済成長の出発点になった。もちろんWTO加盟のメッセージで直接投資が入るようになったが、それは石油輸出でもたらされた国内市場の形成と対になった現象である。「WTO加盟型の高度経済成長」仮説との関係では、これから直接投資が一層増える可能性はある。しかしこれまでは、石油輸出の増加により経済成長がはじまり、つぎに石油輸出で獲得した外貨でインフラ投資が始まった。インフラへの投資は、1990年代のインフラ投資の空白を埋めるために行われるものもあり、技術の後進性を克服するためのものである。

第2章
2.1. 自動車分野(乗用車部門)
 2.1.1. 生産動向
 2.1.2. 販売動向
 2.1.3. 純国産メーカの現状と今後の展望
  2.1.3.1. AvtoVAZ(ヴォルガ自動車工場)
  2.1.3.2. ルースキエ・マシーヌィ社(GAZ)
  2.1.3.3. セヴェルスターリ・アフト
 2.1.4. 主要な外国車現地生産計画の概要と現状
  2.1.4.1. フォード
  2.1.4.2. アフトフラモス(ルノー)
  2.1.4.3. GM-AvtoVAZ
  2.1.4.4. トヨタ
  2.1.4.5. 日産
  2.1.4.6. スズキ
  2.1.4.7. VW
  2.1.4.8. GM
 2.1.5. 外資系部品メーカの動き
2.2. 鉄道車両製造分野
 2.2.1. 生産の推移
 2.2.2. 鉄道輸送会社の鉄道車両保有状況
 2.2.3. ロシアの主要鉄道車両工場
  2.2.3.1. 機関車製造工場
  2.2.3.2. 客車・貨車製造工場
2.3. 民間航空機
 2.3.1. 生産および需要の状況
 2.3.2. 主要な民間機製造工場
  2.3.2.1. カザン航空機製造工場(タタルスタン共和国)
  2.3.2.2. アビアスター社(ウリヤノフスク州)
  2.3.2.3. ヴォロネジ飛行機製造株式会社
  2.3.2.4. 民間航空機スホイ社
2.4. 重電機器
 2.4.1. 重電機器市場の概況
 2.4.2. ロシアの主要重電メーカ
  2.4.2.1. シラヴィエ・マシーヌィ(パワーマシン)
  2.4.2.2. EMアリヤンス
  2.4.2.3. ウラルタービン工場
  2.4.2.4. サターン
2.5. 建設機械、農業機械…46
 2.5.1. ロシアの建設機械部門の概況
 2.5.2. 農業機械分野の概況
2.6. 造船
 2.6.1. 主要な造船所
 2.6.2. 艦船の建造状況
 2.6.3. タンカーの建造状況
 2.6.4. 国が打ち出した危機打開策


自動車市場は、外国車の販売が好調で、純国車は不振。鉄道車両は、ソ連時代末期から新規の車両購入がなかったので車両が老朽化している。近年その更新が始まった。民間航空機は、ソ連解体後生産が衰退した。R&D費用が不足しており、市場のニーズに応える航空機を開発する力がなかったが、最近国家主導でてこ入れが行なわれている。重電機器は、発電設備への強い需要が見込まれるが、そのための設備投資が必要になる。建設機械は、強い需要が見込まれるが、純国産メーカの技術レベルが立ち遅れているので、輸入が増加するとみられる。農業機械は、有効需要が増加しているが、純国産メーカの技術が古いので輸入にシェアを奪われている。造船市場は、タンカーの建造については、技術の後進性などの理由で国内メーカが受注をとることができず、韓国などにその需要を奪われている。

第3章
ロシア工作機械の人材問題 pdf (552KB) / 八幡 成美
3.1. 拡大する労働力需要の産業間格差
3.2. 熟練労働力の供給状況の仕組み
3.3. 進行する高学歴化
 3.3.1. カラリョフ航空機製作・技術カレッジ
 3.3.2. サンクトペテルブルク技術カレッジ
 3.3.3. 航空技術アカデミー
 3.3.4. スタンキン工科大学(STANKIN)
3.4. R&D分野の人材
3.5. 工作機械・工具製造分野での人材問題
まとめ
付図表


第3章では、技術・技能系の人材の需給状況、特に職業技術教育の制度との関係に注目し、統計的なデータから概観した。そして、現地で逼迫している熟練技能者、テクニシャン、エンジニア層の供給がどのようになっていくかを考察した。業種や製品分野により労働力需要の振れは大きく、競争力の低下している工作機械・工具産業の低迷は顕著なものとなっていた。したがって、工作機械・工具産業の労働力需要も急速に低下している。しかしながら、社会全体では高学歴化が進行しており、今後は優秀な技術系人材の供給が増える可能性が高い。大学院レベルの教育も強化されてきており、もともとIT分野では優秀な技術者が多いことで知られており、潜在的にはポテンシャルは高いといえよう。しかし、これだけ落ち込んでしまった業界を立て直すのは容易なことではない。今後の高度技術者の国際移動も含めてその動向が注目される。

第4章
ロシア工作機械産業の現状
はじめに
4.1. ロシア工作機械産業の現状
 4.1.1. 生産の特徴
 4.1.2. 輸出と輸入
 4.1.3. 製品の競争力の問題
 4.1.4. まとめ
4.2. 現地調査の結果から
 4.2.1. ロシア工作機械工業会
  4.2.1.1. 各種ロビー活動
  4.2.1.2. 基礎データ作成活動
  4.2.1.3. 博覧会・展示会の主催と参加
  4.2.1.4. 外国企業との協力の可能性について
 4.2.2. ロシアの工作機械企業
  4.2.2.1. クラースニィ・プロレターリ
  4.2.2.2. モスクワ・ジグ中ぐり盤工場
4.3. 技術の系譜
 4.3.1. 諸外国からの技術伝播の時系列的表示
 4.3.2. 1960年代に国産されていた機種
 4.3.3. 2000年代初頭での技術レベルの推測
4.4. 技術の現状
 4.4.1. 研究開発の状況
 4.4.2. エニムスの事例
 4.4.3. EMO2007 にみるロシア工作機械の技術レベル
 4.4.4. 工作機械技術に関する教育の現状
 4.4.5. 工作機械供給サイドの現地状況のまとめ


第2部 ベトナム
第5章
はじめに
5.1. 新興市場としてのベトナム
5.2. ベトナムへの外国直接投資にみられる変化
5.3. 製造業の生産、輸出への外国直接投資の影響
5.4. 外国投資とインフラ需要
5.5. ベトナムへの資本財輸入
おわりに
結論


本研究会の仮説に基づいて、資本財市場の発展に影響をもたらすと考えられる外国投資について、ベトナムの状況とこれに関連する諸産業の発展、インフラ開発の現状を、統計資料から確認することを目的とする。