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メコン地域開発研究 —動き出す国境経済圏—

調査研究報告書

2008年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
石田 正美 編『メコン地域 国境経済をみる』アジ研選書No.22、2010年3月31日発行
です。
序章
第1章
はじめに
第1節 なぜ国境経済圏なのか
第2節 国境産業
第3節 国境貿易
第4節 国境の経済特区
第5節 ミャンマー—タイ国境の縫製産業の事例
おわりに


本章はメコン地域における国境経済圏の形成が、低開発国の発展戦略として有効であると主張する。国境経済圏とは、国境地域の限定された地理的範囲に形成される局地経済圏である。国境経済圏は国境という国家の枠組みと、これを乗り越えようとする市場の力とのせめぎ合いのなかで、生まれ成長する。

冷戦の終結とCLMV 諸国・中国の対外開放、市場経済化を背景に、メコン地域には先進地域と後進地域が国境を接する国境経済圏がいくつも形成された。国境経済圏は後進地域の立地優位性(労働力・原料へのアクセス、先進国による特恵措置など)と、先進地域の低いサービス・リンク・コスト(良好なインフラ・サービス、中間財・市場へのアクセスなど)を同時に享受できる場所であり、そこでは競争力のある産業集積が形成される可能性がある。

それでは、低開発国が国境経済圏を自国の発展戦略に有効に活かすための課題は何だろうか。それは国境地域に立地する産業を、一歩国境線を越えて自国側に誘致すべく、投資・ビジネス環境を整えることである。その際、国境地域に経済特区を設置することは、有効な政策ツールのひとつである。

第2章
越境交通協定(CBTA)とは何か pdf (411KB) / 石田正美
はじめに
第1節 越境手続き簡素化に関する規定
第2節 ヒトとモノの移動に関する規定
第3節 越境輸送業務に関する規定
第4節 車両の相互乗り入れに関する規定
第5節 道路インフラ、付属設備、標識・標示に関する規定
第6節 総則に関する規定
おわりに


メコン地域における経済回廊では、バンコクとハノイ、バンコクとホーチミンといったように複数の国をまたがる物流が実現段階に入ろうとしている。こうしたなか、国境での手続きを簡素化することを目的として作成され、2007年に署名された越境交通協定(CBTA)について、その概要を示すこととしたい。

第3章
はじめに
第1節 タイの国境周辺における人と物の動き
第2節 タイの国境経済圏開発
おわりに


経済のグローバル化あるいはタイの経済発展に伴って、近年、タイ国境周辺においても人と物の出入りが活発化している。特に近隣諸国から多数の移民労働者が流入してきている。また、近隣諸国とタイの経済的相互依存関係は強く各国とタイとの貿易の大半が国境の税関を介しての国境貿易である。同時にタイは今後、近隣諸国への投資を活発化させ、特に国境経済圏の創設により国境周辺で近隣諸国の労働力と原材料を積極的に活用する方向をとりつつある。本章では、国境貿易とタイの政策に沿って形成されつつある国境経済圏の現状と展望を探る。

第4章
ラオスにおける国境経済圏開発事業 pdf (564KB) / ケオラ・スックニラン
はじめに
第1節 発展の三角地帯
第2節 サワン・セノ経済特別区
第3節 デンサワン国境貿易区
第4節 ルアンナムター県ボーテン国境貿易区
おわりに


ラオスでは、国境経済圏の開発と位置づけられる事業が存在する。これらは、アジア開発銀行を中心とした大メコン圏経済協力関連事業と、ラオスと近隣諸国が中心になって進めるものと大別できる。本章では、ラオスで進行しているこれらの事業を、合意された事業計画、法的な枠組みから明らかにすることを目的とする。

第5章
はじめに
第1節 中越関係の緊密化
第2節 中国の対越投資
第3節 中越国境貿易の現状
第4節 中越国境経済圏
おわりに


近年、中国とベトナムの経済関係は急速な緊密化をみせている。中国は貿易、投資、経済協力分野でベトナム経済のなかで大きな存在感を示しつつある。ベトナムの対中貿易は工業製品を輸入し一次産品を輸出する垂直貿易構造となっている。2007年、ベトナムの貿易赤字に占める対中貿易赤字額は7割にも達しており、今後もベトナムの工業化と経済発展に比例するように対中赤字は増加して
いくものと予想される。

また、中国企業のベトナム進出も活発である。家電、オートバイ、自動車などの製造業投資に加え、不動産やサービス業など幅広い分野で中国企業の進出がみられる。なかでも中国政府の借款を背景にした中国企業によるベトナム公共事業への参入が増加傾向にある。いまやベトナムの国内インフラ整備事業では日本などからのODAに並び中国の経済協力資金も重要な政策財源となりつつある。

中越関係緊密化を背景に国境貿易やそれに伴う国境経済圏の発展が今後も見込まれる。しかし、中越国境経済圏の現状は中国経済圏とほぼ同義といえるほど、中国経済の影響が色濃くみられる。国境貿易推進のための越境交通協定(CBTA)の進捗にあわせ、中国経済がベトナムで存在感を増しつつある現状を報告する。

第6章
はじめに
第1節 貨物輸送および越境交通協定の実施動向
第2節 人的往来の動向
第3節 国境経済開発区などの国境地域のビジネス活動
第4節 対策と措置


中国雲南省が、アジア開発銀行(ADB)がイニシアティブを取る大メコン圏経済協力メカニズムに参加して以来、ラオス、ミャンマー、ベトナムとの越境インフラ整備、貿易、投資などの経済協力は大きな発展を遂げており、関係国の人的往来も日増しに増加している。同時に、国境を跨ぐ国境経済開発区の建設も開始されている。しかし、民族、文化、政治と経済制度がそれぞれ異なる大メコン圏では、貿易と投資の円滑化を促進することは容易ではない。そのため、総合的な対策と措置を講じる必要があるだろう。

第7章
はじめに
第1節 中央サブ回廊、北部サブ回廊、南ラオス~シハヌークビル・サブ回廊における陸上交通インフラの整備
第2節 南部湾岸サブ回廊における陸上交通インフラの整備
第3節 カンボジア・南部ベトナムの地方開発
おわりに


GMS南部経済回廊、とりわけ南部湾岸サブ回廊における陸上交通インフラの整備状況を概観し、それが今後のカンボジアとベトナムの経済発展にいかなる含意を有するかを検討した。そして、結論として以下のことを指摘した。陸上交通インフラの整備は大切な一歩であるが、今後それをいかに活用するのかがさらに重要な課題である。その際に、経済区や工業発展のみではなく観光産業などをも視野に入れた開発の構想力、さらにその前提として越境的連結性に対する人々の認識や政治的意思が不可欠である。また、陸上交通インフラのみではなく、海路・水路、空路をも視野に入れた総合的な考察が強く望まれる。

第8章
はじめに
第1節 東アジアの多様性
第2節 集積、混雑、拡散
第3節 フラグメンテーションの発展
第4節 経済格差を成長のダイナミズムに転換
第5節 サービスリンク・コストとネットワークセットアップ・コストの削減
第6節 現地政府および日本の関与が不可欠


CLMV 諸国の開発は、企業のグローバル化の力をいかに活用するかにかかっている。それには、サービスリンク・コストとネットワークセットアップ・コストを削減する政策が柱となる。この政策に沿い、チェックリストを作成し、チェックリスト項目ごとにCLMV 諸国の現状を評価することが必要である。本章は、その準備作業である。