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政治変動下の発展途上国の政党 —地域横断的研究—

調査研究報告書

佐藤 章 編
2008年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
佐藤 章 編『新興民主主義国における政党の動態と変容』研究双書No.584、2010年発行
です。
序章
はじめに
第1節 研究の背景、意義、狙い
第2節 本研究会での「発展途上国」概念について
第3節 初年度の議論
むすび


本章では、本研究会の趣旨を説明し、今年度の議論について簡単な紹介を行う。本研究会は、理論的成果の整理・検討と個別事例の検証を通して、政治変動下における政党に関する重要な論点を導き出し、発展途上国の政党に関する理解に貢献することを目ざすものである。また本研究会は、地域横断的な研究が相対的に少ないことと、近年の政治史の展開のなかで理論的枠組みと現実の乖離がみられる地域もあるとの認識を踏まえ、これらの難点を克服しうるものとして比較研究の手法に注目するものでもある。

第1章
はじめに
第1節 宗派主義制度に基づく多極共存型民主主義体制
第2節 権力の二元的構造
第3節 アンビバレントな政党
おわりにかえて
付録


本章は、駐留シリア軍の完全撤退に伴う第二共和制レバノンの政治変動が政党に及ぼした影響を論じるための前段階として、同国の政治制度、政治体制、そして政治構造を概観し、それらが政党活動をいかに規定しているかを解明することを目的とする。第1節では、「宗派主義」、「多極共存型民主主義」と称されるレバノンの政治制度、政治体制を解説する。第2節では、「垂直関係」と「水平関係」を軸とし、「権力の二元的構造」のもとで安定的に機能してきた(実効支配下の)同国の政治構造を分析する。そして第3節では、レバノンの政党の実態を、政党の法的地位、先行研究における分析、そして国民議会選挙時とそれ以外の時期(平時)の活動に着目することで明らかにする。

第2章
はじめに
第1節 戦後イラクの政治体制と政党
第2節 顕在化する民族・宗派のポリティクス
第3節 インフォーマルな政治動員と政治的不安定
おわりに
図表


本章は、戦後イラクにおける「民族・宗派のポリティクス」を、政党制と政党の動員メカニズムに着目して分析するものである。戦後に顕在化した民族・宗派のポリティクスは、バアス党権威主義体制下の政治社会構造と現政権党の亡命期の性格に強い影響を受け、戦後、米国のイラク政策の歪みの中で段階的に構築された。民族・宗派のポリティクスは、「民族・宗派間対立」に加えて、政党が政治動員において依存する「非政党集団」と政党の間の協調・対立・分離に起因する「宗派内対立」によって特徴づけられている。そのため、戦後イラクの政治体制は、極めて不安定な展開を続けてきた。

第3章
南米南部諸国におけるネオリベラル期民主主義の政党システムを分析するための予備的考察 / 出岡直也
はじめに
第1節 本稿の問題設定
第2節 ネオリベラル改革から左傾化の時代の南米南部の政党システムの概観
第3節 労働者階級編入によって形成された政党システム
第4節 1960 年代(キューバ革命後の時代)以降の変容
第5節 民主主義が維持される時代になって以降の変容の分析
第6節 結論に代えて — ネオリベラル時代の階級妥協の政党システム?


第4章
政党政治を乗り越える? — ラテンアメリカにおける「社会運動」の政治的潜在力とその限界 / 上谷直克
はじめに
第1節 政治的活動空間の開放
第2節 政治運動体の実際
第3節 (ネオ)ポピュリストとの関係性
おわりに(展望)
図表

第5章
第1節 問題設定と先行研究
第2節 新生南アフリカの政治制度におけるいくつかの特徴
第3節 1994 年選挙と1999 年選挙と国民党/新国民党の対応
第4節 制度変化への対応の政治:2000 年以降
まとめと課題
図表


本報告では、なぜ国民党が南アフリカにおける初の全人種参加の選挙から約10年の時間を経た段階で南アの政治アリーナから消滅したのか(あるいはそうした選択をした、さらには、そうせざるを得なかったのか)、という問いを立てる。その際、政治動員(支持)対象と戦略、あるいは政党を取り巻く制度の変化という文脈に着目する先行研究を整理・参考にし、新生南アフリカという時空間構築されてきた制度を確認しながら、そこにおける国民党の対応の様式の検討を行う。そして、暫定的な結論として、新生南アフリカという新たな大状況における政党としてのアイデンティティの危機とその確立の試みの中で繰り返された「結果的な失敗」の連鎖ということを指摘する。

第6章
解題
資料
表1 政党名などの略語
図 ケニア歴代国会における党勢の変遷(1963~2008 年)
表2 第1 次国会(1963~69 年)党別議席数
表3 第2~6 次国会(1969~91 年)党別議席数
表4 第7~10 次国会(1992~2008 年)党別議席数
表5 歴代キバキ政権の閣僚構成(2006 年11 月15 日~2008年1月8日) 表6 ケニア第9 次国会:全国会議員リスト(2002 年12 月~2007年11月)および所属政党の変遷
表7 ケニア第10 次国会議員(2007 年12 月~):所属政党の変遷


ケニアは、独立直後から最近にいたるまで激しい政治変動を経験してきた。なかでも複数政党制政治と関連した暴力が増加する中で、近年になってその重要性をより増していると考えられるのが、「政党」と呼ばれる政治的結社の研究である。ケニアの政党は、とくに1991年の複数政党制回復のあと、急激にその性質や機能を変化させているとみられる。しかし、限られた先行研究しか存在しないのが現状である。本稿では、ケニアの政治変動と政党研究のための準備作業として、ケニアの歴代国会における党勢の変遷を図示し、あわせて第1~第10次にいたる各国会の党別議席数、最近の歴代内閣の閣僚リストと所属党派、第9・第10次国会における全議員の所属政党とその変遷、および政党・選挙協力組織の用語集を作成する。

第7章
解題
資料
内戦期コートディヴォワール政治史年表
付表1 年表中に登場する主な英字略号
付表2 コートディヴォワール内戦における合意文書
付表3 コートディヴォワール内戦に直接関連する国連安保理決議一覧


コートディヴォワールでは、1990年代末から今日に至るまでの間に、軍事政権の樹立や内戦を経験し、政情が不安定化する時代に突入している。しかしながら、このような劇的な変化のもとでも、1990年代半ばに民主化の帰結として確立された、政党間の基本的対立構図は引き続き、政治のダイナミズムを主に構成してきた。政情の不安定化に過度に目を奪われることなく、民主化以後今日に至るまでをひとつの連続した時期として捉え、そこでの政党ならびに政党間関係の動向を歴史的に位置づける作業が必要とされている。本資料は、この課題に取り組む準備作業として、政党にとくに留意しながら内戦期の政治史を時系列に沿って整理した年表である。

付属資料 ワガドゥグ政治合意 全訳