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アフリカ農村の住民組織と「市民社会」

調査研究報告書

2008年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
児玉 由佳 編『現代アフリカ農村と公共圏』研究双書No.581、2009年発行
です。
まえがき pdf (296KB)
第1章
はじめに
 1.発展途上国における「市民社会」への援助動向
 2.「市民社会」に関する議論の変遷:規範から実体へ
 3.開発分野における「市民社会」
おわりに


1980年代以降の開発援助の分野において、「市民社会」への関心は高まっており、「市民社会」を対象とした援助資金も増加しつつある。近年の「市民社会」の概念は、近代社会において想定されていた市民社会とは性質が大きく異なっている。特に、国家や市場からの独立ではなく、それらとの関係性が重要になってきている。開発の分野では、市民社会に関する議論の一つである社会関係資本の概念の影響を大きく受けているため、経済発展との関連から「市民社会」が論じられることが多い。しかし、その妥当性については
多くの議論がある。

第2章
はじめに
 1. マテンゴ社会とセングの世界
 2. セングの再創造
おわりに


タンザニア・マテンゴ社会における内発性を志向する持続的社会開発の事例の中で、伝統的組織原理としてのセングという社会慣行の再創造と開発の接合のプロセスを取り上げた。その中で近代化論・市民社会論・アフリカ農村にかかわる今日の複雑な問題状況を再検討し、<セング>の再創造の中に見られる、アフリカ的共同体の開かれた性格と公共性のあり方について論じた。

第3章
はじめに
 1. アフリカの市民社会/共同体への視座
 2. エチオピア農村社会の複合的なアソシエーションの形成
おわりに


本稿は、アフリカの多様なアソシエーションとその複合的性格に注目することで、これまで対立的にとらえられてきた市民社会/共同体の二元論をのりこえ、現代アフリカの農村社会をとらえるあらたな視点の提起を目指す。とくに「市民社会」という概念を切り口として、現代のアフリカ農村をとらえるときに、どのような新しい視座が開けるのか、考えていく。

アフリカにおける「市民社会」の定義をめぐる議論や「共同体」に関する議論を振り返ると、「市民社会」と「共同体」が、いかに理念的な対立物として構築されてきたかがわかる。そして、アフリカの都市/農村社会で観察される複数のアソシエーションには分断しがたい連続性があることを示したうえで、多様なアソシエーションの形態とそれらの複合的/重層的な関係に注目する必要があることを提起する。

最後に、エチオピア西南部のコーヒー栽培農村における複数のアソシエーションについて概説し、人びとが境界横断的な緩やかな組織に複合的に関与していることを示し、「市民社会」と「共同体」という二元的な枠組みでは農村社会の集合性/共同性の実態を十分に理解できないことを論じる。

第4章
はじめに
 1. 政治経済的背景
 2. 参加・自己組織化の経済的条件
 3. 在来知と外来知
 4. 参加・協治の社会的条件
まとめと展望


参加型自然資源管理は,「市民社会」的な開発・保全プロジェクトたることを一つの理想として展開しつつある。本章では,参加型への移行を試みつつある東・南部アフリカの現場から明らかになってきた実態を文献レビューによって検討するとともに,(1) 資源利用者集団ないし住民組織による管理が成立する経済的条件,(2) 管理における在来知と外来知の関係,それら知識が社会=生態系に及ぼす影響,(3) ネットワークや討議・包括的プロセスを含む資源「協治」の社会的条件に注目し,論点を整理する。

第5章
はじめに
 1. アフリカにおける新しいタイプの生産者組織の興隆とその背景
 2. ガーナの事例
おわりに


本稿はアフリカ農村における生産者組織の近年の特徴を、ガーナの事例をもとに検討する。経済自由化以降にあらわれた新たな生産者組織には、過去の国家主導型の組織化の状況下では見られなかった特質が見られる。それらの特徴は、状況変化や新たな市場機会の出現に対する積極的な対応、個別の小農では対応できない問題を組織化することで解決を図る戦略、外部者との積極的な連携などである。

第6章
はじめに
 1. マラウイにおける酪農の概要
 2. 酪農に従事する農家
 3. 酪農組合の活動
 4. 酪農が農家経済に及ぼす影響
おわりに


本稿ではマラウイの酪農産業に焦点を絞り、その概要をまとめるとともに、酪農が農家経済に及ぼす影響を明らかにする。聞き取り調査によれば、酪農は収益性が高く、農家の貴重な所得源となっていることが明らかになった。ただし、子牛自体が非常に高価であり、子牛を購入できる世帯は比較的資金力のある豊かな世帯に限られてしまうため、貧しい世帯が酪農産業に参入することは困難を伴う。しかし、酪農組合が援助の受け皿となることにより、貧困世帯も子牛を入手でき、酪農産業に参入できるようになる可能性もある。

第7章
はじめに
 1. ザンビア共和国における土地制度の変遷
 2. ザンビア北部の自然とベンバ社会
 3. ベンバの土地利用:チテメネ耕作
 4. 土地制度の改正と焼畑農耕社会の混乱
まとめ—今後の研究にむけて


ザンビアをはじめアフリカ諸国では、植民地政策による土地制度の二重性が現在、問題となっている。土地制度の二重性とは民族社会内部の伝統的支配者層の権力や権威にもとづく慣習地の共同保有と国家の近代法を根拠に土地保有証明書にもとづく土地の所有や賃借が併存していることを意味している。ザンビアでは1995年に土地法が改正され、市場メカニズムにもとづいた土地の保有制度が急速に整備されつつある。この流れには、市場メカニズムの導入と近代的な法整備にともなうアフリカの貧困削減と自律した市民社会の形成というドナー諸国をはじめ国際社会の取り組みがある。市場メカニズムの導入にともなう土地制度の早急な「近代化」と法制度の整備にもとづく市民社会の形成プロセスは、農村社会に大きな動揺をもたらし、人びとの生活に変容を迫っている。筆者が1993年以降、現地調査を継続しているザンビア北部州のベンバという焼畑農耕社会を事例に、土地法の改正にともなう慣習地における企業や個人による土地の囲い込みがどのようなインパクトを与えているのかを議論する。

第8章
はじめに
 1. エチオピアにおける「市民社会」援助の現状
 2. エチオピアの国家と「市民社会」との関係の変遷
 3. エチオピアの「市民社会」組織の現状
おわりに


エチオピアの「市民社会」への援助は、エチオピア側の政治変動に大きく影響を受ける傾向はあるものの増加しつつある。このような国際的な援助動向の影響もあり、エチオピア政府と「市民社会」組織との関係は、一定の緊張感はあるものの改善しつつある。エチオピアの「市民社会」組織は、農村部で多数活動しているインフォーマルな組織と、都市部を中心に活動するフォーマルな組織に大きく分類できる。前者は小規模な自助組織が中心であり、「市民社会」組織としての役割については等閑視されてきたが、近年になって、そのネットワークを活かして援助の受け皿をめざす動きがある。フォーマルな組織は、増加する「市民社会」援助の動向を受けて数が急増しつつあるがその歴史はまだ浅く、アドボカシー団体については政府との関係も良好とはいいがたい。