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台湾総合研究Ⅰ-企業と産業

調査研究報告書

2007年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
佐藤 幸人 編『台湾の企業と産業』研究双書No.574、2008年発行
です。
第1章
戦後台湾経済に大きな比率を占めた公営事業は、1980 年代後半、経済の「国際化・自由化・制度化」の中で民営化されることとなった。公営事業民営化は、経済発展と民主化という「二つの価値」を実現したNIES、台湾にとってどのような意味を持つのか。本稿では、民営化以前の台湾の公営事業を概観し、民営化政策策定の誘因、実施過程で出現した問題、それにともなう社会システムの転換という視点で分析するものである。

第2章
主に日本からの技術移転をもとに勃興した台湾TFT-LCD 産業は、わずか5年ほどで、日本に対するキャッチアップを終え、その後も発展を継続している。本稿では、このような台湾TFT-LCD 産業の発展メカニズムを分析していく。具体的には、TFT-LCD 産業の生産工程や設備投資の特質に注目したい。そうした観点で、後発国がTFT-LCD 産業に参入し急速に発展するための条件を検証し、そのような諸条件を台湾企業がどの程度備えていたかを解明していく。

第3章
本章は台湾の分業システムに関する先行研究を批判的に検討する。主に3つの論考について論じた。周添城と林志誠は輸出指向型中小企業の制度的背景を明らかにしたが、その競争力の源泉についての議論が不十分である。張明宗と陳志成は垂直非統合システムの合理性を理論的に説明したが、それはやや静態的である。于宗先と王金利は中小企業から大企業への成長という重要な問題を提起したが、そのメカニズムの解明には至っていない。

第4章
本稿では,台湾における家族所有型企業グループの発展を所有構造と経営行動のあいだの相互作用に注目して分析する試みの一環として,いくつかの予備的な作業を行う。Ⅱでは先行研究の成果を整理するとともに,その残された課題として,家族所有型企業グループの多角化行動を,所有家族の存在との関わりから理解する必要があることを指摘する。Ⅲではデータ整理を行い,1980 年代半ば以降の台湾経済に占める大型企業グループの位置づけの高まりと,このなかに占める家族所有・経営型グループのプレゼンスを分析する。Ⅳでは金融業を事例として1990 年代以降の家族所有型企業グループの事業展開を考察する。

第5章
「物流」は日本で作られた言葉であり、その言葉がそのまま台湾でも使用されている。しかし、定義を検討すると、日本と台湾では違う部分が存在することが明らかになる。また、物流業に含まれる業種を見ると、現在のところ旅客と貨物運送が区別されていないなど、物流の考え方がまだ定まっていないのが現状である。その上で、センサスデータから、物流業の現状を分析する。データから物流業は1990 年代以降に企業数が急増し、小規模経営が多い産業であることが明らかになる。台湾の物流業に関する研究は端緒をついたばかりであることが指摘される。

第6章
1988年に台湾は対外直接投資の純輸出国に転じて以来、産業空洞化が懸念されてきた。台湾は「産業空洞化」に陥ってはいないが、対外直接投資が台湾経済の発展を促したのか、負の影響を与えたが、他の要因により「空洞化」が回避されたのかは定かではない。本稿では、対外直接投資が台湾経済に与えた影響に関する先行研究の整理を通じ、対外直接投資が台湾経済に与えた影響の動態的分析、その複雑な経路の解明の必要性を指摘する。