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IMFと開発途上国

調査研究報告書

国宗 浩三 編
2007年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
国宗 浩三 編『アフリカと岐路に立つIMF—改革の課題、地域金融協力との関係—』研究双書No.576、2009年発行
です。
目次 pdf (117KB)
序章
総論 pdf (287KB) / 国宗 浩三
第1章
IMFの役割と改革への課題 pdf (328KB) / 柏原千英
国際通貨基金(International Monetary Fund: IMF)は1970 年代以降、信用供与先が開発途上国中心なったことを契機に、その融資枠組みや種類を多様化し、政策条件(コンディショナリティ)をつうじて、また、(加盟国の自発的協力やIMFからの提言に強制力を伴わないという限界はあるものの)融資機能を実行する上での主要な情報源となるサーベイランスとコンサルテーションによって、実質的かつ自ら開発問題に関与してきた。この過程においては、コンディショナリティと融資枠組みの目的との整合性、与信スケジュールや返済期間といった実際的観点からの不満や、IMFが本来注力すべき機能からの逸脱しているのではないかという批判、あるいは、債務危機に際してステークホルダー間の仲介や最後の貸し手機能を(不完全ではあるにせよ)果たしてきた事実への是非等、さまざまな議論やIMF 批判が蓄積された。

しかし、上記の批判に応えるかたちで2005年に提示された中期戦略は、IMFが組織内外にわたる改革を敢行するであろうと見なす材料に乏しい。今後の進展を待たねばならないが、現時点ではIMF が負うべき機能とその根拠を再定義し、加盟諸国が直面する問題に対してどこまで関与するか、他機関との連携や役割分担を明確にしていく視点が欠落しているからである。

第2章
IMFの政治経済学 pdf (359KB) / 小浜裕久
世界経済の安定的発展、国際金融システムの安定を確保するというIMFの責務は依然として重要であることは疑いない。しかし、ブレトン・ウッズ会議から60年以上が経ち、IMFのデ・ラト専務理事も言うように、世界は変わっており、IMFもそれに伴って変わらなくてはならない、ことも事実である。

1990年代後半のアジア危機を見れば分かるように、ワシントン・コンセンサスの画一的適用では、世界経済の安定的発展を図ることは出来ない。

IMFはあまり多くの目的を追求すべきではない。いろいろな専門家が言うように、IMFの役割は開発ではない。国際金融システムの安定を確保するための短期資金の供与に集中すべきである。

IMFが有効に機能するには、簡素で、誰にでも分かりやすい意志決定構造でなくてはならない。年間500時間、7万頁にもなる文書を理事たちが議論するのは無駄である。今なら、グローバルな不均衡、すなわちアメリカの膨大な経常収支赤字と中国、日本、産油国の黒字をどう調整するかといった優先順位の高い問題に対処すべきである。

第3章
IMFの経済分析モデル pdf (294KB) / 樹神昌弘
本稿では、IMFが比較的短期の経済分析をする際に用いている経済モデルを紹介する。IMFの経済モデルを理解することは、IMF が「経済とはどのようなメカニズムの下に動いていると考えているのか」を把握する上で必要なことである。そして、そのようなIMF の経済観を知ることは、IMFの行動を理解する上で重要である。

本稿の中では、Financial Programming モデルとGlobal Economy Model を中心に紹介している。その結果、前者は予測には有用だが学術性は薄いこと、後者は学術性や経済政策の効果の評価には利点をもつが予測には不向きなモデルであることを、本稿は指摘している。

第4章
IMFが国際収支危機に陥っている国へ資金援助する際には、融資条件(コンディショナリティ)が必ず課される。近年のIMF 批判においては、この融資条件が年を追うごとに肥大化している点がひとつの論点となった。

IMFでは、融資条件のスリム化を目指す改革が行われているが、それでも数十年前と比べて、現在の融資条件が肥大化していることは事実である。

融資条件が肥大化したのは、「構造的コンディショナリティ」と呼ばれる条件が多く挿入されるようになってきたことが最大の理由である。これは、中長期的な経済成長にとって必要な(とIMF が考える)経済改革を求めるものである。これに対して、マクロ経済政策を通じて比較的短期に国際収支を改善するための政策については、IMF の創設時から基本的にその考え方は変わっていない。それが、
本稿で検討するフィナンシャル・プログラミングと呼ばれる枠組みである。

本稿では、フィナンシャル・プログラミングのコアとなるモデルと、基本的な拡張モデルについて詳しく検討する。また、国際収支危機への対応という大きな枠組みの中で、それがどのように位置づけられるべきかについても考察する。

第5章
1990年代半ばから新興市場経済諸国において国際収支危機が頻発化したことを受け、IMFはこれらの国々の対外収支管理とマクロ経済運営を支援するためのさまざまな政策を実施した。しかしこれらの政策の中には所期の目的が達成されていないものが少なくなく、その中核をなす融資活動に関しても多くの批判が寄せられている。これらの批判を背景としてIMF の中期戦略では新興市場経済諸国への支援強化が重要課題の一つに位置づけられ、最近では新たな融資保証制度の設立を中心とした取り組みの方向が明らかになりつつある。本稿では近年の新興市場経済の国際収支危機とそれに対するIMF の対応策をレビューし、今後IMFがこれらの国々のマクロ経済運営にどのように関わってゆくべきかを考える。われわれの分析によれば、一般に新興市場経済と呼ばれる国々は決して均一な集団でなく、外生的な資本移動ショックに対する脆弱性もかなりの程度当該国の政策にあり方に依存している。さらに現在検討されている融資保証制度には理論的にも実務的にも問題が多く、その実効性に関しても疑問が少なくない。IMFはいたずらに融資制度の多様化を図るのでなく、既存の融資制度の見直しや柔軟な活用を通じて各加盟国にとって最適な支援を実施してゆくべきである。

第6章
経済のグローバル化の進展にともない、金融面では資本の流れはもとより、規模も大きく変化を遂げてきた。その結果、いくつかの国では通貨危機を経験するという事態が発生した。とりわけ、アジア通貨危機はIMF の対応あり方などについて大きな議論をよぶところとなったほか、この地域に金融協力の枠組みを作るきっかけとなった。紆余曲折を経て成立したアジアの「地域金融協力」であるが、そもそも「地域金融協力」とは何であろうか。実は「地域金融協力」という枠組みを用いて協力体制を築いているのは他の地域にも存在する。本章では、世界の「地域金融協力」の制度を考察することによりその特徴を明らかにし、地域金融協力とは何かを提示する。

第7章
アジア金融協力とIMF pdf (493KB) / 国宗浩三
本稿の中心的な課題は東アジア地域における金融協力の推進とIMF の関係についての考察である。とくに、通貨危機に備えた金融協力という側面に焦点を当てて論じる。

最初に、IMFという国際機関が存在しているのに、それに加えて地域レベルの金融協力がなぜ必要なのかという点について、「自己防衛」、「外貨準備の節約」、「競争による便益」「IMF との補完性」、「国際関係上のメリット」という5つの理由を提示する(第1 節)。次に、東アジア地域における金融協力の枠組みの推移を振り返る(第2 節)。

以上を受けて、東アジアにおける金融協力を推進していく上での課題を、「資金量の問題とモラル・ハザード」(第3 節(1))、「IMFプログラムとの関係」(第3 節(2))、「メンバーシップの問題」(第3 節(3))、「組織形態の問題」(第3 節(4))の4 点に分けて論じる。

最後に、通貨危機への対応以外のテーマとして「為替協調」、「資本市場の育成」の二つについて論じる。