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地域振興の制度構築に関する予備的考察

調査研究報告書

西川芳昭・吉田栄一 編
2007年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
西川芳昭・吉田栄一 編『地域の振興—制度構築の多様性と課題—』研究双書No.578、2009年発行
です。
第1章
第1節 調査研究課題をどう理解するか
第2節 地域振興の制度構築を考えていく際の地域とはなにか
第3節 利用される地域の資源とはなにか
第4節 一村一品運動による地域振興の問題点
第5節 参加の度合いと制度構築
第6節 地域資源に注目して何をあきらかにするか


昨年度の研究「日本の地域産業振興の経験と開発途上国への教訓」から得られた知見から、地域振興の制度構築の事例分析を行う際の視点について整理した。固有の価値を持っているとされる地域の資源が、多様なアクターによって具体的な価値把握に繋がることが、地域振興に必要であり、その際にどのような仕組みで地域内外のアクターが関わり協働していくかを視点とすることが必要となる。地域内のアクターが地産地消のようなローカルな資源利用を土台に、どのように地域外のアクターと連携していくかについて分析する必要性を提案した。

第2章
第1節 アフリカの中小零細企業振興
第2節 政策立案者からみた中小企業の問題性—資料1
第3節 アフリカの中小零細企業にとっての国際マーケティング—資料2
第4節 今後の研究にむけて-小規模マーケティングにおけるバリューチェーンアプローチ-


今日、中小零細企業振興は対アフリカ経済協力の中心的な位置を占めつつある。この協力分野では日本の中小企業関係の制度作りの経験を活かすことが求められている。特に中小零細企業のマーケティングは関心の高い分野だが、国内市場を対象とする日本の中小零細企業の蓄積した経験を活かすのは難しい。需要が加速度的に拡大した日本の市場におかれた中小零細企業と、貧困化が進み所得水準が低下しているアフリカの市場は異なる。尚かつ中小零細企業を支える流通のシステムが未発達な状況でのマーケティングも異なる。現状のようにマーケティングの問題を制度面から解決しようとすると、制度へアクセスできる範囲の企業や生産者に効果が限定されてしまう。しかし、バリューチェーンの視点を応用するならば、対象とする市場に進出するために必要な技術やリソースを効率的に選択することも可能ではないだろうか。ここに取り上げた資料には中小企業の直面する問題を制度の面から指摘し、また状況を制度によって改善しようとしている事例が紹介されている。3つの資料((1) 中小企業振興関係者からみた中小企業の問題点、(2) 地方産地にとっての市場とエージェント-ケニア名産品一覧-、(3) 貿易見本市の出展参加者の国際マーケティング意識に関する資料)は、外部のエージェントの介在なしには、より広い市場にアクセスしにくい産地の状況を示している。

第3章
はじめに
第1節 マラウイの農業の実態と農産物の多様化の重要性
 1. 小農の作付作物
 2. 新しい農産物を導入する意義
第2節 マラウイの農産物生産者組合の概要
第3節 ロビ園芸協同組合の事例
 1. ロビ園芸協同組合の概要
 2. 組合加入世帯の特徴
 3. 組合活動で得られた農業所得
 4. 各グループの概要
 5. 農業所得とグループ活動の関係性
 6. 小括
第4節 チクニ・キノコ栽培組合の事例
 1. チクニ・キノコ栽培組合の概要
 2. 組合活動で得られる農業所得
 3. 個人の活動で得られる農業所得
 4. 小括
おわりに


本章では、マラウイの小農がより収益性が高い新しい農産物の生産技術を習得する重要性を指摘した上で、実際に小農に新たな農産物の栽培を推奨している野菜生産者組合とキノコ栽培組合の事例を取り上げ、これらの組合の活動が小農に与えた影響を検討する。

第4章
はじめに
第1節 地域の概要
第2節 協力隊プロジェクトの内容
 1. 協力活動の概要
 2. 各分野における活動
 3. プロジェクトの影響
第3節 2001年の再調査の概要
 1. 地域の変化
 2. 開発プロセス
 3. プロジェクトの成果
 4. まとめ
第4節 ティナンゴール村の農村観光事業(2007年の調査の方向)


マレーシア・サバ州の平均的な農村であるティナンゴール村(T 村)では、1980 年代に青年海外協力隊による農村開発プロジェクトが実施された。本論では、T 村でのプロジェクトの概要とその後の展開をまとめる。その上で、T村で行われているルングス族の伝統的なロングハウス(高床式の長屋)という地域資源を活用した農村観光事業に関する今後の調査の方向を示す。2007年の研究では、ロングハウスを活用した農村観光一村一品事業に関連する村内外のアクター、利用された地域資源の在り様、外部との繋がりというネットワークの問題、平均的なマレーシアの村落というインフラ環境の中でのサービス提供、顧客確保といった村レベルでのサプライチェーン・マネージメントなどについて考える。

第5章
はじめに
第1節 地域開発の概念と開発援助
 1. 開発援助のパラダイムシフト
 2. 社会的能力
 3. 資源、組織、規範
 4. 地域開発と開発援助
第2節 徳島県における地域開発事例
 1. 阿波尾鶏の開発普及
 2. 徳島県上勝町
 3. 彩
第3節 徳島の事例と地域開発援助
 1. 農村と都市の生計
 2. 社会的準備の重要性と困難性
 3. 官民共同の枠組み造りと基礎的なインフラの重要性
 4. 仲介者としての地域行政の役割
 5. 地域レベル
 6. 地域への帰属意識とアイデンティティ
まとめ


近年の開発援助の潮流は、対象国の中央政府機関だけではなく、地域社会への直接的な働きかけを要請している。これに応えるうえで、我が国の地域振興の経験から得られる教訓は何であろうか。本論は、徳島県の事例研究を通して、この問いかけに接近しようと試みたものである。

第6章
はじめに
第1節 日本の離島振興の経緯
 1. 第二次世界大戦以降の国土開発
 2. 離島振興法の制定、延長
第2節 離島振興法による島の変質と今後の方向性
 1. 離島振興法による島の変質
 2. 今後の離島振興の方向性
第3節 市町村合併と離島
 1. 平成の市町村合併
 2. 長崎県の離島関係市町村の合併の動き
第4節 自立を目指す小値賀
 1. 小値賀町の概要
 2. JICA 研修の受け入れ
おわりに


これまでの国土開発と離島振興法の流れについて概観しながら、離島振興法によって離島がどのように変質したのか、さらに外発的発展によって地域住民の生活の向上ができなかったなかで内発的発展を目指し市町村合併を選択しない離島地域の長崎県小値賀町での動きを整理する。特に、小値賀の事例では地域の自立・自律を目指すための人材育成事業から始まる国際協力という海外との関わりの中でその意義と制度の活用をみていくことにする。

第7章
第1節 制度構築と時間軸
第2節 日本における地域振興の歴史的展開
第3節 地域振興の制度構築を考えるために


制度構築は時間軸と密接に結びついている。本稿では日本の地域振興の展開を年表の形で提示し、地域振興の制度構築に至る歴史的背景と環境・時代性を眺めた。年表からは、地方分権化などの政策環境とともに、地方首長の役割、地域リーダーの存在、行政と民間・住民との関係などの歴史的過程が地域振興の制度構築に重要であることが読み取れる。