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新興工業国における雇用と社会政策:資料編

調査研究報告書

宇佐見 耕一 編
2006年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
宇佐見 耕一 編『新興工業国における雇用と社会保障』研究双書No.565、2007年発行
です。
まえがき pdf (18KB)
序論 pdf (36KB) / 宇佐見耕一
本報告書の目的は、1980年代以降にみられた雇用関係の変容と、それと並行して行われた労働・社会保障改革の実態とその要因を解明するための予備的考察である。その際、雇用関係柔軟化が重要な切り口となるが、その概念に関しては多くの議論が存在する。また雇用関係の変容に伴い、新たな社会保障・福祉国家論の分析枠組みが求められている。

第1部 民主化の過程で強い労働運動を経験した国
第1章
はじめに
第1節 雇用と社会保障改革に関する先行研究
第2節 雇用・労働関係の法的枠組み
第3節 雇用・労働市場の状況
第4節 労働組合・企業家団体・コーポラティズム
おわりに:雇用改革と社会保障


本稿は、1990 年代以降の雇用関係の変容と社会保障制度改革がどのような対応関係にあり、またそれがどのような要因により推進されたのかという研究課題に対する予備的考察である。先行研究としてネオ・ポピュリズム論とコーポラティズム論をとりあげ、分析手段としての可能性を探っている。また、雇用状況、労働組合や企業家団体の状況、コーポラティズムの枠組み変化について述べ、最後に雇用関係柔軟化が社会保障制度にもたらす問題点を指摘している。

第2章
ブラジルの雇用と社会政策 pdf (120KB) / 上谷直克
はじめに
第1節 先行研究:「労働法制改革」の政治学的研究
第2節 CLT 改革と「ブラジル・コスト」
第3節 「労働のフレキシビリティ」と個別的労働法制改革
第4節 「劣勢に立つ労働組合」と集団的労働法制改革
第5節 労働法制改革と労働市場パフォーマンス
おわりに


本稿は、1990年代以降のブラジルにおける雇用関係の変容および労働・社会保障制度改革の実態を解明する予備的作業として、現段階での労働法制改革の進展状況について概観し、そこで浮かび上がるいくつかの問題点を指摘しようとするものである。近年、他のラテンアメリカ諸国と同じく、ブラジルにおいても個別的労働法制(individual labor law)の柔軟化と労働市場の流動化が進んでいるが、集団的労働法制(collective labor law)の改革については、その必要性が叫ばれているにもかかわらず、これといった進展は見られない。

第3章
はじめに
第1節 韓国経済と雇用・労働問題の概観
第2節 雇用・労働政策の変遷
第3節 労使関係・労働条件をめぐる現状


「漢江の奇跡」、「東アジアの奇跡」と称された韓国の急速な経済成長は、政府主導による経済優先と労働運動弾圧の成果でもあったが、1987年「民主化特別宣言」直後には労働運動の劇的な高揚が見られた。その後、97年のIMF通貨・経済危機による高失業と非正規労働増加を背景に、最低生活保障政策など経済・社会的弱者保護政策に並行して、経済・労働市場の自由化と労使協調の誘導が同時進行し、関連法令の改訂が続いている。他方、政界では2004年国会選挙で民主労働党(90年結成)が躍進したが、2大労組ナショナルセンターは、一方では融和(御用)性、他方では急進性と弱小性から、コーポラティズムが定着するには至っていない。本稿では、韓国のこうした雇用・労働の基本的枠組みのほか、産業のサービス・情報IT 化、資本・労働の国際化、人権意識高揚と「ジェンダー主流化」などに伴う現代的課題も整理したい。

第4章
トルコの雇用と社会政策 pdf (110KB) / 村上 薫
はじめに
第1節 先行研究
第2節 労働法・雇用制度の変化
第3節 雇用・労働市場の状況
第4節 労働組合・企業団体
第5節 雇用変化に対応した社会保障改革


トルコでは、1980年代以降の経済自由化により、労働市場の柔軟化が進み、インフォーマルセクターが拡大した。2003年の新労働法は柔軟な雇用を制度化し、インフォーマルセクター労働者の削減を目的とする。他方、インフォーマルセクター労働者のセイフティネットとして公的扶助制度の本格的な運用が開始した。

第2部 一党支配のなか労働組合活動が弱かった国
第5章
はじめに
第1節 労働市場・雇用の変化と現状
第2節 労働組織の再編
むすびにかえて


メキシコでは1980年代以降、輸入代替工業化政策から新自由主義経済政策への転換、および制度的革命党(PRI)体制の弱体化・終焉という経済・政治両面での大きな変動が生じた。本稿は、新たな経済政策の下での雇用・労働市場の変化と労働組織の再編過程を整理する。PRI体制は労働者、公務員・教員、農民の3 部会を下部組織とし、労働組織は基本的に政府との協調関係のなかで運動を展開してきた。しかし近年、PRI系組織の力は急速に弱まり、独立系の存在が大きくなっている。メキシコの労働組織の最近の動向は、労働市場・雇用関係の変化だけでなく、政治的民主化過程にも深く関連している。

第6章
台湾の労使関係と社会政策 pdf (85KB) / 上村泰裕
はじめに
第1節 労使関係
第2節 雇用の変化と社会政策
おわりに


台湾の労使関係は、全国レベルではコーポラティズムから多元主義へと変化してきたが、企業レベルでは法律に支えられた「産業民主主義」が残存している。一方、経済競争のグローバル化が進むにつれて、台湾でも雇用の柔軟化を求める圧力は強まっている。とはいえ、台湾における雇用の柔軟化の進み方は日本や韓国よりも緩やかである。女性・高齢者・外国人労働者の働き方は、たんに労働市場の圧力に左右されるだけではなく、労使関係や社会政策のあり方に関連している。

第7章
中国の雇用と社会保障 pdf (58KB) / 澤田ゆかり
はじめに
第1節 雇用と社会保障改革に関する先行研究
第2節 雇用・労働法規
第3節 雇用変化に対応した社会保障改革
おわりに


中国では計画経済から市場経済へと転換するなかで、労働市場が形成され、雇用の流動化と柔軟化が進んだ。労働法や雇用に関わる制度改革は、こうした変化に対応するための過程であった。労働者の保護については、労働保障観察制度が実施され、政労使の三者協議が制度化された。社会保障制度もこうした雇用制度改革に影響を受けており、従来の企業ベースの社会保険から個人積立型の社会保険を中心としたソーシャル・セーフティネットが新たに設計された。ただし現状では農民や非正規雇用者が事実上そこから排除されている。このため新たな雇用形態と社会保障をつなぐ制度の構築が急務である。

第3部 エスニシティーが労働政策に影響を与えていた国
第8章
はじめに
第1節 雇用・労働市場の状況
第2節 労働・雇用法制とその変化
第3節 先行研究の整理と次年度への課題


本稿では、研究会2年目に向けた準備作業として、南アフリカの労働市場の現状、労働法・雇用制度の特徴と改革に向けた動きについてまとめる。まず、南アフリカの雇用・労働市場の状況を、公式統計の問題点や、失業やインフォーマルセクター/経済の捉え方の多様性に留意しながら概観する。次に、近年の雇用・労働法制の変化の動向を検討し、雇用・労働法制改革で大きな役割を果たしている雇用者団体と労働組合の「社会的対話」の制度枠組みについて述べる。最後に、先行研究を整理し、次年度に向けた課題を提示する。

第9章
はじめに
第1節 雇用と社会保障制度に関する先行研究
第2節 マレーシアの経済と雇用・労働市場の状況
第3節 労働組合・雇用者団体
第4節 雇用・労働をめぐる制度
第5節 社会保障制度
おわりに:雇用と社会保障をめぐる課題と問題点


1980年代以降、マレーシアは急激な経済成長を遂げ、労働市場の状況は大きく変化した。本稿は、マレーシアにおける雇用と社会制度を議論する資料として、とくに雇用・労働市場の変化、労働組合や雇用者団体、雇用・労働関連の法制度、社会保障制度の状況について概観することを目的とし、課題と問題点を指摘している。