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アフリカの「個人支配」再考

調査研究報告書

佐藤 章 編
2006年3月発行
この報告書は中間報告書です。最終成果は
佐藤 章 編『統治者と国家—アフリカの個人支配再考—』研究双書No.564、2007年発行
です。
第1章
はじめに
第1節 研究会発足に際しての問題意識と狙い
第2節 「個人支配」概念の相対化
第3節 各中間報告の概要


本章は、「統治者」に焦点を当てて、サハラ以南アフリカの政治分析に新しい視点を探究するという本研究会の趣旨の解説である。本研究会は、コートディヴォワール研究におけるウフェ=ボワニという統治者像の再検討が、同国現代政治史全体に書き換えをも要請するという「二重の書き直し」の可能性を、他のアフリカ諸国に敷衍して、比較研究を行うところから出発した。ここでは、この狙いについて述べた上で、研究会での議論の要点と本中間報告の各論の概要を示すことで、今後に開けている「統治者」再考の作業の可能性を展望する。

第2章
はじめに
第1節 先行研究
 1 「個人支配」研究における四類型
 2 「崩壊国家」の生成とその評価をめぐって
 3 ソマリア研究の概要と「崩壊国家」としてのソマリア
第2節 シアド・バーレ体制の変容
 1 体制確立以前のモハメド・シアド・バーレ
 2 シアド・バーレ体制の時期区分
  (1)独立後の「議会制期」(文民政権期):1960~1969 年
  (2)1969 年クーデタからオガデン戦争へ
  (3)オガデン戦争の余波から家族・氏族王朝的支配へ
暫定的なまとめと今後の課題



「崩壊国家」としてのソマリアはなぜ生成したのかという問いへの答えを探求するための一環として、本報告は「崩壊国家」という状況に先行して存在していたシアド・バーレ体制を再考するための整理と、若干の検討を行ったものである。

シアド・バーレ体制は「出来事」としての「崩壊国家」をある程度説明することはできるが、中期・長期の「過程」を説明するには不十分であるということが暫定的な結論である。

第3章
はじめに
第1節 歴代軍事政権の概観
第2節 個人支配性の比較考察
 1 クーデタによる権力掌握
 2 政策の立案実施
 3 民政移管プログラム
むすびに代えて



本稿は、ナイジェリアの国家指導者、特に軍人国家指導者に注目し、その政権における個人支配性を史的に考察しようとする試みである。具体的には、ナイジェリアの軍部支配を第1期と第2期に大別した上で、両期の8つの軍事政権における個人支配性を、クーデタによる権力掌握、政策の立案実施、民政移管プログラムという3つの視点から史的に比較考察する。そして、そうした一連の考察を通して、ナイジェリア軍事政権における個人支配性が、総じて第1 期には希薄であったのに対して、第2 期にはより顕著なものになっていくという点を示す。

第4章
はじめに
第1節 ジョン・ガランについて—個人的記憶と研究対象としての諸問題—
第2節 国民的英雄の誕生と突然の死
第3節 ライフヒストリー
資料


アフリカの個人支配を考察するうえで、国家元首だけでなく、反政府武装組織の指導者も重要な位置を占めていると考えられる。こうした組織は、国家の陰画であったり、相似的なコピーであったりするので、個人支配の研究にあらたな視点をもたらすことが予想される。本報告は、22年間にわたって歴代のスーダン政府との内戦を戦い抜いたSPLM/SPLA(スーダン人民解放運動/スーダン人民解放軍)の創設以来の最高指導者、ジョン・ガランに焦点をあてた事例研究である。2005年1月の包括的平和協定の調印後、ガランは7月にはスーダン共和国の第一副大統領に就任したが、同月末、キャリアと人気の絶頂時に、事故死した。本論文では、彼のライフヒストリーや死の前後の状況を概観しつつ、来年度の調査研究に向けた問題点の整理をおこなう。

第5章
第1節 はじめに-ナイフの倫理
第2節 倫理の歴史-中間集団論
 1 デュルケム
 2 西アフリカと中間集団
第3節 寛容の国家倫理


西アフリカ・コートディヴォワール共和国現代史におけるウフエ=ボワニの個人支配の如何を倫理の視点から分析する作業に先立ち、デュルケムによる社会学的中間集団論の理論的価値と再評価をめぐる予備的な考察を試みた。

第6章
はじめに
第1節 前史
第2節 キバキ政権の誕生とボーマス・ドラフト
第3節 コンセンサス法案をめぐる攻防
第4節 国会選抜委員会方式による「新憲法案」作成
第5節 国民投票:キャンペーンの実態と投票結果
第6節 否決後の動向



本稿は、ケニアにおける憲法見直し論争とエリート間の権力抗争の関係を分析するための準備作業として、まず、2002年末のキバキ政権誕生から2005年12月までの新憲法制定問題の経緯を詳細に跡付ける。次に関連資料として国民投票結果を選挙区別、州別、その他領域別に網羅、集計を示すほか、全国会議員について、新憲法案への立場を新聞情報などから推定して掲載し、別途政党別の集計を付す。その他2003年のキバキ政権発足時から現在にかけての全内閣のリストを作成する。

第7章
はじめに
第1節 ルワンダ虐殺関連人名録
第2節 アカズに関する資料


1994 年にルワンダで起こった大虐殺のメカニズムを考えるために、ハビャリマナ体制(1973~94年)の分析は不可欠である。しかし、ハビャリマナ期の政治については先行研究が少なく、虐殺との関連についてもほとんど論じられていない。本資料は1994年のルワンダ虐殺に関連する人名録であり、虐殺時の役割やハビャリマナ政権期の地位などの情報が記載されている。

第8章
第1節 本章の目的と意義について
第2節 各記載項目に関する注記



本章は、アフリカ諸国の20 世紀以後の独立国において登場した「統治者」—国王・大統領・首相、マルクス-レーニン主義国家における唯一党のトップ、軍事政権首班、暫定政権首班などを指すここでの総称—を悉皆調査し、一覧表化した試みである。この作業は、「個人支配」再考に際して潜在的な研究対象となりうる事例の全体像の把握という意義の他、Jackson and Rosberg[1982]以後進められてこなかった、アフリカの「統治者」に関する総覧的な研究の欠落を補うことと、比較政治学的な研究のための素材の提供という意義を持つものである。