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ラオス物流コスト:越境コスト削減の必要性

アジ研ポリシー・ブリーフ

No.85

2017年3月31日発行

PDF (730KB)

  • ラオスの国内の物流コストは、片荷の場合タイの2.2倍、両荷の場合1.4倍。
  • ビエンチャン-バンコク間の物流コストの4割は越境コスト、1割は片荷の増分。
  • ラオス政府は通関費用越境コストなどをタイなど周辺国並みに引き下げるべきである。

アジア諸都市から横浜までの40ftコンテナ輸送費をみると、ビエンチャンからの輸送費が飛び抜けて高い(図1)。2014年の2500ドルの内訳は、バンコク-横浜間が800ドル、ビエンチャン-バンコク間が1700ドルである。2015年の現地セミナーで、ビエンチャンから約20kmのタイ側国境ノンカイまでの輸送費が1000ドルとしたところ、ラオスの物流業者からその数字は高過ぎるとの声が出た。本研究会では、1000ドルという数字の妥当性を含め、高いとされるラオスの輸送費を改めて検討してみた。

図1 アジア各都市~横浜の40ftコンテナ輸送費

図1 アジア各都市~横浜の40ftコンテナ輸送費
(出所)『ジェトロセンサー』2015・16年5月号。

ラオスとタイの国内コスト比較

ラオスにおけるビエンチャン-サワンナケート間(490km)の輸送費をラオスの日系・タイ系・地場企業1社ずつ、タイにおけるバンコク-コンケン間(450km)をタイ系企業5社からkm当たりコンテナ輸送費を尋ねた。すると、タイは往路・復路とも荷が埋まる両荷で1.126ドル/km、ラオスは両荷で1.515ドル/kmでタイの1.4倍、帰りの荷物が見つからない片荷の場合で2.466ドル/kmで2.2倍であった。

片荷の問題

ラオスの物流で片荷の問題はしばしば聞かれる。しかし、その要因は大きく分けて2つある。ビエンチャンからサワンナケートに送る荷に比べ、逆方向の荷が少ない場合、片荷の問題が生じる。ラオスとタイとの間では、明らかにタイからの入超であり、同様に片荷の問題が生じる。しかし、起点と終点が内陸で海を経ない場合はトラック会社のコンテナの利用が可能である。

他方、タイのバンコク港やレムチャバン港を通じたラオスと日本や欧州など第3国との間の輸出入では、トラック会社は船会社に預託金を支払い、コンテナを一定期間借りる。ラオスが第3国から原料・部材を輸入する場合にタイの港まで戻すコンテナと、ラオスが第3国に製品を輸出するためにタイの港から持ち込むコンテナは契約上空にしなければならない。契約上の片荷輸送は、例えばレムチャバン港からバンコク近郊の工業団地までであれば100km以内で済むが、ビエンチャンまでとなると700km近くを空で運ばなければならない。

ビエンチャン——バンコク間の輸送費

さて、ビエンチャン-バンコク港間の輸送費に話を戻そう。実はこの区間の輸送業者は、いずれもタイか外資系で、ラオスの地場企業はない。したがって、この区間の輸送費は、タイ国内の1.126ドル/kmに同区間の640kmを掛けた721ドルということになる。しかし、日本など第3国との間の輸送には、往路か復路を片荷にしなければならない。タイ国内で荷を運んで、帰り荷が見つかると、その輸送費は行きの7割程度で済む。そこで、片荷を前提としたビエンチャン-バンコク間の片道の輸送費をxと置くと、

 x + 0.7x = 721 × 2

との関係が成立する。この式を解くと、片荷を前提とした輸送費xは848ドル、両荷と比べた片荷の増分は848-721=127ドルになる。

越境諸コスト

輸送費と片荷の増分に加え、ラオスとタイとの国境を越える諸手続きの費用がかかる。国境ゲートで尋ねると、橋の通行料がトレーラーの場合10.1ドルで、往路と復路の2回で20.2ドル、車両をラオスに輸入してタイに戻す一時輸入の手続き費は18輪以上のトラックで20.6ドルかかる。さらにラオス側の国境の出入国管理局では6:00~8:00と16:00~22:00は時間外とのことで、現地通貨で1.4ドル、タイ・バーツで1.7ドルを徴収され、時間内も含め往復で0~3.4ドルの費用が運転手1人につきかかる。これらを合計すると、40.8~44.2ドルになる。

しかし、物流企業に尋ねると、いわゆる通関費と空のコンテナの越境費用がラオス側国境で200~217ドルと50ドル、タイ側で133~150ドルと17ドル、それぞれかかる。物流企業が自社で書類を作成する場合は、小計で400~434ドルで済むが、書類作成代行業者に依頼すると133~200ドルがかかり、結局のところ400~634ドルがその他の費用でかかる。これに国境ゲートで聞いたコストを加えると441~678ドル、中間値をとって560ドルがかかる。

ビエンチャン-バンコク間の要因分解

輸送費721ドル、片荷の増分127ドル、越境諸コスト560ドルを合計すると1407.5ドルとなる。その内訳を示したのが図2である。

図2 ビエンチャン-バンコク間の輸送費の内訳

図2 ビエンチャン-バンコク間の輸送費の内訳

(出所)調査結果に基づき筆者作成。

その他の調査結果との整合性

輸送費から積み上げた1407.5ドルと誤差率3.5%できわめて近い。また、ビエンチャン-バンコク間の日系企業の平均輸送費は1610ドルで、冒頭で示した2014年の1700ドルとも誤差率5.6%で非常に近い。

一方、タイ側国境ノンカイからビエンチャンまでの輸送費はどうであろうか。ラオス側国境からビエンチャンまでの18kmの輸送費は、トレーラーで100ドルの企業があり、これに越境コスト560ドルと片荷127ドルの20km分4ドルを加えると、664ドルとなる。昨年のセミナーで示した1000ドルと比べると、誤差率50.6%で、昨年のセミナーで示した1000ドルは高過ぎるとの声ももっともなものである。

まとめ

最後に図2をもとに政策提言を述べることとしたい。第1に越境諸コスト4割は高過ぎる。ラオスの通関費用などを少なくともタイ並みにすべきであろう。第2に片荷費用の削減策としてビエンチャン近郊にICDとしてビエンチャン物流園(VLP)の建設案がある。VLPによりトラック会社の片荷区間はVLPまでに短縮される一方、VLPからタイの港までの輸送費は船会社が負担することになり、その負担軽減のため、船会社のアライアンスのプラットフォーム形成が必要である。第3に、輸送費そのものを削減し、船会社の負担軽減のためにもビエンチャン-バンコク間の鉄道輸送は有効な手段であり、そのためのラオス、タイ、ドナーなどとの対話・検討を提言としたい。Land-lockedからLand Bridgeに、ラオスがメコン地域のハブになるには、輸送費削減を避けて通ることはできない。みた。

(いしだ まさみ/開発研究センター)

本報告の内容や意見は、執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式見解を示すものではありません。