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海外研究員レポート

海外研究員レポートは、各国に派遣された海外研究員の赴任地における政治、経済、社会等の諸事情について、エッセー風にまとめたものです。特定の調査課題の遂行に向けた活動に取り組む一方で、現地に滞在しなければ得ることができないようなトピックスを中心に報告を行っています。


2013年5月
海外研究員(南アフリカ)
佐藤千鶴子

西ケープ州の農場労働者によるストライキをめぐる考察


2012年11月、西ケープ州デドァーンズ(De Doorns)の生食用ぶどう(以下、ぶどう)農場において起こった労働者のストライキにより、農場労働者の労働条件や待遇をめぐる問題が改めてクローズアップされることになった。南アフリカでは、賃上げを求める労働者が団体交渉の手段としてストライキに訴えることは珍しくはないが、同年8月に起こったマリカナ鉱山での鉱山労働者によるストライキとそれに対する警察による暴力的鎮圧という悲劇的な結末が記憶に新しい最中で発生した農場労働者によるストライキは大きな注目を集め、政府は迅速な対応を迫られることになった。本報告では、2012年11月以降の新聞報道と2013年4月~5月にかけて実施された農場労働者を取り巻く状況に関する社会的対話でのヒアリングをもとに、西ケープ州の農場労働者によるストライキについて発生から収束までの事実関係を整理し、このストライキが提起した2つの問題について考察を加える。

(1) 西ケープ州における農場労働者のストライキの経緯
西ケープ州の農場労働者によるストライキの震源地となったデドァーンズは、ケープタウンから国道1号線沿いにおよそ150キロ北に位置する。ヘックスリバー・バレー(Hex River Valley)として知られるこの地域はぶどう栽培の中心地のひとつであり、国内の総生産量の3分の1を担っている。ヘックスリバー・バレー生食用ぶどう協会の会長によれば、同地域ではおよそ1万6000人の農場労働者が雇用されている。このうち主に農場に居住する常勤の労働者は5000人ほどで、残りはトウズリバー(Touwsriver)やウースター(Worcester)といった近郊の町やデドァーンズにある2つの非正規居住区に住み、ぶどうの収穫準備が始まる9月から収穫の終わる4月まで雇用される季節労働者である。非正規居住区の住人には、東ケープ州、ジンバブウェ、レソトからの移民労働者が多数含まれる。

 

2013年4月
海外研究員(韓国)
安倍 誠

韓国ベビーブーマーの過去、現在、未来-
『彼らは声を出して泣かない』から

はじめに
第二次世界大戦後、多くの国では、急速な出生数の向上、いわゆるベビーブームが生じ、そこで生まれたベビーブーマーたちはその社会において独特な地位を占めることになった。ベビーブームの期間は国によってまちまちであり、アメリカでは1946年から1959年まで、日本では1947年から1949年までと言われるが、韓国の場合、朝鮮戦争の後になる1955年から1963年までがベビーブームであったとされる。現在、ベビーブーマーは約734万人、総人口の約14%を占めている。年齢は満49才から57才くらいまで、韓国では数え年で年齢を語ることが多いので、韓国的に言えば現在の50代がほぼベビーブーマーに相当することになる。彼らは1970年代から90年代の韓国の高度成長を支えてきた世代でもある。最近、ベビーブーマーの人生を描いた『彼らは声を出して泣かない-ソウル大宋虎根教授が描くこの時代50代の人生報告書』が刊行された。本報告ではこの本を手がかりに、韓国ベビーブーマーの過去、現在、未来を考えてみたい。

 1.ベビーブーマーたちの軌跡
著者の宋虎根はソウル大社会学科の教授であり、新聞のコラムなどにもよく登場する知識人として知られる。1956年生まれのベビーブーマーである著者は、友人と飲酒した帰りに運転代行サービスで現れた同世代の男性の身の上話を聞き、本書を書く決意をする。執筆にあたって著者は多くのベビーブーマーにインタビューをしている。ベビーブーマーたちが語る自身の過去と現在の記録が本書の最大の魅力となっている 。

 
 
南アフリカ
「西ケープ州の農場労働者によるストライキをめぐる考察」 佐藤 千鶴子 / 2013年5月発行
 
スウェーデン
「気候と経済発展 —西欧の環境は本当に過酷か—」 ケオラ スックニラン / 2013年5月発行
 
韓国
「韓国ベビーブーマーの過去、現在、未来-『彼らは声を出して泣かない』から」 安倍 誠 / 2013年4月発行
 
台湾
「台湾:第4原発に関する国民投票は実施されるのか?」 竹内 孝之 / 2013年4月発行
 
中国
「スマートフォン時代の『山寨』携帯電話」 丁 可 / 2013年3月発行
 
台湾
「台湾メディア産業における『中国の影響力メカニズム』の背景」 川上 桃子 / 2013年3月発行
 
韓国
「『経済民主化』で注目される財閥オーナーの裁判」 安倍 誠 / 2013年1月発行
 
台湾
「『香港独立論』の登場?」 竹内 孝之 / 2013年1月発行
 
台湾
「影響力の争奪戦としての『りんご日報』買収劇」 川上 桃子 / 2012年12月発行
 
インド
「医薬品の無料供給計画に関する考察」 久保 研介 / 2012年11月発行
 
韓国
「大財閥を夢みた企業家の挫折--熊津グループの経営破綻」 安倍 誠 / 2012年10月発行
 
シンガポール
「ASEAN経済共同体構築に向けたIMT-GTの動向」 梅﨑 創 / 2012年10月発行
 
台湾
「南シナ海と尖閣諸島をめぐる馬英九政権の動き」 竹内 孝之 / 2012年10月発行
 
フィリピン
「経済は成長するも平均世帯所得は増加せず」 鈴木 有理佳 / 2012年10月発行
 
台湾
「反「旺中グループ」運動が問いかけるもの」 川上 桃子 / 2012年9月発行
 
ケニア
「ケニアの「不満の冬」」 岸 真由美 / 2012年9月発行
 
スウェーデン
「スウェーデンの林業—持続的、高収益な産業としての林業—」 ケオラ スックニラン / 2012年8月発行
 
韓国
「『何を選択するのか』と韓国経済性格論争」 安倍 誠 / 2012年7月発行
 
インド
「医薬品特許の強制実施権設定に関する考察」 久保 研介 / 2012年7月発行
 
ケニア
「ケニアの高等教育事情」 岸 真由美 / 2012年6月発行
 
台湾
「『均富』への厳しい船出:証券キャピタルゲイン課税法案をめぐる紆余曲折」 川上 桃子 / 2012年6月発行
 
シンガポール
「ASEAN島嶼地域における接続性強化の動向」 梅﨑 創 / 2012年3月発行
 
スウェーデン
「分散力による経済発展の可能性 —北欧諸国の経験が示唆することー 」 ケオラ スックニラン / 2012年3月発行
 
インド
「必須医薬品の価格規制を巡る最近の動向」 久保 研介 / 2012年2月発行
 
中国
「改革・開放の加速を提唱した『南巡講話』20周年を素通りする胡錦濤政権」 佐々木 智弘 / 2012年2月発行
 
インド
「インドの鉄鉱石違法採掘問題」 佐藤 創 / 2012年2月発行
 
フィリピン
「名誉なランキングの背景にある格差」 鈴木 有理佳 / 2012年1月発行
 
カザフスタン
「下院選挙を控えたカザフスタン:経済格差と社会不安」 岡 奈津子 / 2011年12月発行
 
シンガポール
「ASEAN交通分野協力を巡る最近の情勢:第17回ASEAN交通大臣会合を踏まえて 」 梅﨑 創 / 2011年12月発行
 
中国
「中国外交部档案館における史料公開の現状」 松本 はる香 / 2011年12月発行
 
インドネシア
「インドネシア・ランプン州での環境保護活動 現地NGOによる海岸ゴミの清掃とマングローブの再植林 」 東方 孝之 / 2011年12月発行
 
メキシコ
「多国籍企業化するファミリービジネス」 星野 妙子 / 2011年12月発行
 
中国
「中国・6中全会『文化体制改革』の意義」 佐々木 智弘 / 2011年11月発行
 
インド
「インドにおける貧困線をめぐる昨今の騒動について」 佐藤 創 / 2011年11月発行
 
韓国
「事業拡大を続ける韓国財閥」 安倍 誠 / 2011年10月発行
 
インド
「医薬品価格規制をめぐる政策議論」 久保 研介 / 2011年10月発行
 
フィリピン
「調整が難しい財布のヒモ—フィリピン財政の過小支出」 鈴木 有理佳 / 2011年10月発行
 
シンガポール
「ASEAN 経済共同体を巡る最近の情勢」 梅﨑 創 / 2011年9月発行
 
インドネシア
「映画ファンの受難:なぜインドネシアではハリウッド映画を観られなかったのか 」 東方 孝之 / 2011年9月発行
 
エチオピア
「エチオピアの高等教育」 児玉 由佳 / 2011年8月発行
 
メキシコ
「債務問題に揺れるメキシコの大手ビジネスグループ」 星野 妙子 / 2011年8月発行
 
カザフスタン
「アルマトゥにおける物価高と収入格差」 岡 奈津子 / 2011年8月発行
 
インド
「ノイダ地区の土地収用問題をめぐって:インドにおける「土地戦争」の背景」 佐藤 創 / 2011年8月発行
 
エチオピア
「中産階級の台頭とメイド不足」 児玉 由佳 / 2011年7月発行
 
タイ
「二軍選挙とチュウィット —2011年タイ選挙投票前-」 相沢 伸広 / 2011年6月発行
 
フィリピン
「基礎教育を6-4制からK-6-4-2制へ」 鈴木 有理佳 / 2011年6月発行
 
インド
「特許制度改革後のインド医薬品市場をめぐる政策動向」 久保 研介 / 2011年6月発行
 
インドネシア
「拡大するインドネシアの公的部門-地方分権化に伴う公務員数の増加について」 東方 孝之 / 2011年6月発行
 
英国
「イエメンはどこに行く」 佐藤 寛 / 2011年6月発行
 
メキシコ
「独占から寡占へ?  通信産業再編をめぐるビジネスグループの仁義なき戦い 」 星野 妙子 / 2011年6月発行
 
米国
「実証分析における因果性と再現性:
Pitt and Khandker (1998)のマイクロファイナンス論文を巡る一連の議論から」
高橋 和志 / 2011年5月発行
 
インド
「反汚職・反腐敗運動と民主制」 佐藤 創 / 2011年5月発行
 
エチオピア
「インフレと格闘するエチオピア」 児玉 由佳 / 2011年4月発行
 
ベトナム
「ホーチミンの旧正月」 荒神 衣美 / 2011年4月発行
 
インドネシア
「滞在許可更新手続き体験談」 東方 孝之 / 2011年3月発行
 
フィリピン
「バタアン原子力発電所は再封印か?」 鈴木 有理佳 / 2011年4月発行
 
中国
「農民工版『春天里(あの春の日に)』——誰が、何に共鳴したのか」 山口 真美 / 2011年2月発行
 
台湾
「台湾における外交史料の公開の現状—外交史を見る視点の多様化の重要性—」 松本 はる香 / 2010年12月発行
 
インドネシア
「2010年のインドネシア経済— 第3四半期までの統計資料から —」 東方 孝之 / 2010年12月発行
 
メキシコ
「リーマンショック後のメキシコ経済」 星野 妙子 / 2010年12月発行
 
米国
「「マイクロファイナンスのインパクトとイノベーション会議2010」参加報告」 高野 久紀 / 2010年12月発行
 
インド
「インドのある女三代記」 村山 真弓 / 2010年11月24日発行
 
チリ
「マプチェのハンガーストライキと政府・大企業の対応」 北野 浩一 / 2010年11月6日発行
 
英国
「イギリスにおける国立博物館の『入場無料』政策の維持と文化財返還請求をめぐって」 佐藤 創 / 2010年11月発行