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日本が支援した缶詰はターゲットに届いているか?

海外研究員レポート

ビエンチャン

2017年5月発行

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日本が支援した缶詰はターゲットに届いているか?

ある日、日本人の友人から「北部で買ってきたお土産です」と1つの缶詰をもらった。もらったときは普通の缶詰だと思い気にしていなかったが、ふと缶詰をみると日本の国旗と世界食糧計画(WFP)のロゴが印刷してあった。聞けばそれは日本の支援でWFPを通じてラオスの貧困地域で配布されている援助品であった。友人が活動する地域ではその缶詰が2500キープ(約34円)で売られているという。つまりターゲットに届いていない、または横流れしている可能性がある。友人と相談した結果、問題提起をしてみよういうことになり、缶詰の写真とともに支援がターゲットに届いていない可能性があるとのコメントを添えて筆者のSNSに投稿した。すると缶詰支援に携わる関係者から連絡があり、缶詰は有効活用されており、売られているということは初耳であるとの連絡があった。そこで筆者は缶詰支援の実態を調べることにした。

日本の外務省のウェブサイトを調べてみると、2014年3月12日にイタリアで「途上国の要望を踏まえた水産加工品の供与」に関する書簡をWFPと交換している1。それによると、東日本大震災の被災地産加工品(魚缶詰)をカンボジア、ギニアビサウ、スリランカ、そしてラオスに対してWFPを通じて援助するということである2。ラオスの案件は無償資金協力で3億円であり、実施は平成25年度となっている3。ウェブサイトの説明では、「ラオスは、近年、農耕地における大規模な洪水被害が発生しており、洪水発生時には慢性的な食糧不足と相乗して被害が拡大している状況にあります。今回の協力は、WFPからの支援要請を受けて食料援助を実施するものです」とある4。つまり筆者がもらった缶詰は災害による食糧不足の際に住民に配布される備蓄用であった。また友人の話では賞味期限が近くなったものは小学校の給食で活用されているということである。

一方WFPのウェブサイトでは缶詰に関する情報は見当たらない。しかしWFPの地方フィールドサイトが置かれている場所が掲載されている。北部では、サブオフィスがウドムサイ県サイ郡、ルアンナムター県ルアンナムター郡、フィールドオフィスがポンサリー県ニョートウー郡、ブンヌア郡、クワー郡、ルアンナムター県シン郡、ローン郡、ヴィエンプーカー郡、ナーレー郡、ウドムサイ県ベーン郡、フン郡、ガー郡、パークベーン郡、ルアンパバーン県ゴイ郡に置かれていることがわかった。したがって以上の地域周辺で缶詰が配布されている可能性が高い。しかし上記すべての県で調査を行うのは不可能であるため、道路が整備され車の移動が容易であるルアンパバーン県、ウドムサイ県、ヴィエンチャン県に絞って市場と道路沿いの商店を対象に調査を行うことにした。ヴィエンチャン県にWFPのフィールドオフィスはないが、缶詰が北部で売られている場合、距離的に近いヴィエンチャン県まで流れている可能性があると考えたためである。

調査は4日間行った。道路沿いの商店は大きな商店から小さな商店まで無数にあるため、それらをランダムに訪問し、また各郡の主要市場ではタイ産の魚の缶詰を販売している商店を中心に調査を行った。4日間で訪問できた商店の数182軒である(表1)。

表1

場所 軒数
ヴィエンチャン県ヴァンヴィエン郡13号線沿い商店 1
ヴィエンチャン県ヴァンヴィエン郡市場 5
ヴィエンチャン県カーシー郡市場 6
同県カーシー郡4号線沿い商店 2
ルアンパバーン県ナーン郡4号線沿い商店 4
同県シェングーン郡4号線と13号線沿いの合流地点の商店 4
同県パークウー郡13号線沿い商店 8
同県ナムバーク郡13号線沿い商店 13
ウドムサイ県サイ郡13号線沿い商店 7
同県サイ郡L市場 6
同県サイ郡L市場場外商店 5
同県サイ郡NM市場 10
同県サイ郡2W号線沿い商店 1
同県ベーン郡2W号 線沿い商店 7
同県ベーン郡市場 10
同県フン郡2W号 線沿い商店 20
同県フン郡C市場 7
同県フン郡L市場 6
同県パークベーン郡市場 5
同県パークベーン郡中心地の商店 5
同県パークベーン郡2W号線沿い(パークベーン橋)商店 3
同県パークベーン郡2W号線沿い商店 3
ルアンパバーン県ルアンパバーン郡PS市場 41
同県同郡D市場 3
合計 182

(出所)筆者作成。

日本とWFPが支援している缶詰はウドムサイ県サイ郡、ベーン郡、フン郡、パークベーン郡の4郡の商店や市場で販売されていた。ただし流れてきた形態(横流れの可能性や個人で支給されたものを販売など)はさまざまである。また缶詰配布地域の住民の多くは同缶詰が援助品であり、小学校給食で提供されていることを知っていた。ただし缶詰は給食だけでなくさまざまな方法で生徒や住民にも配布されている。また横流れしているという話を聞いたことがある住民も数人いた。以下、いくつかのケースを記す。

缶詰の販売について

ケース1(ウドムサイ県サイ郡L村の商店):近所に住んでいる軍人からお土産に6缶もらい店に並べている。もらったばかりで缶詰の販売価格は決めていない。その軍人はルアンナムターン県ルアンナムター郡の駐屯地で勤務しており、帰省した際にもらったので詳しいことは知らない。その軍人のお父さんに話を聞くこができ、息子は帰省した際に多くの缶詰を持ってきた、また息子に会うためにルアンナムター郡の駐屯地に行ったことがあり同じ缶詰が大量に置かれていたのをみたという。店主によると売りに来る個人や業者はいない。

ケース1写真:

ケース1写真:

ケース2(ウドムサイ県サイ郡NM市場内の商店):店頭に3缶並べられ、1缶6000キープで販売されている。ただし店内には45缶のストックがある。また店主の家には10箱以上ストックがあり箱単位でも販売できるという。どこから仕入れたか聞いたところ、県内の建設会社が道路建設に携わった労働者への賃金を支払うために缶詰を売りに来たという。缶詰を売った資金で労働者の給与を支払うというのである。建設会社の企業名は教えてもらえなかった。

ケース2写真:店頭

ケース2写真:店頭

ケース2写真:店内ストック

ケース2写真:店内ストック

ケース3(ウドムサイ県ベーン郡市場内の商店):店主の子どもが学校でもらってきたが、油が多すぎて好きではなく家族も食べないので1缶5000キープで売っている。

ケース3写真:

ケース3写真:

ケース4(ウドムサイ県フン郡N村の商店):店頭で3缶並べられていた。道路建設に携わった労働者が労働の対価としてもらった缶詰を3月に売りに来た。一箱23万キープで購入し、店では1缶5000キープで販売している。村の小学校でもこの缶詰を配ったり食べたりしているが、教師が学校で食べなかったものや余ったものを売っているという話は聞いたことがある。また店にいた村の警察官の話では、昨年村が洪水になった際に缶詰が配布されたが一部の人たちには配られなかった。なぜだかはわからないが村長が一部を流している可能性があると指摘していた。また店主によれば子どもが学校でもらってきた缶詰を商店でお菓子と交換することもあるという。店には7人の村人がおり、全員この缶詰が援助品であり売ってはいけないことは認識していた。

ケース4写真:

ケース4写真:

ケース5(ウドムサイ県フン郡C村の商店):3缶販売していた。価格は1缶5000キープ。子どもが学校で4缶もらい1缶は家族で食べたが、好きではないので余った3缶を販売している。売りに来る個人や業者はいない。

ケース5写真:

ケース5写真:

ケース6(ウドムサイ県パークベーン郡P村の商店):店では11缶売っている。1缶4000キープ。店主が近隣の小学校の教員宿舎建設を手伝った際に労働の対価として4缶もらった。学校給食で余ると村人に無料で配ったり、また給食で肉を買う際にこの缶詰と交換したりすることもある。援助品なので売ってはいけないと知っているが、おいしくないので食べずに売っている。子どもたちは給食で出されるのでほぼ強制的に食べなければいけない。売りに来る人や業者はいない。

ケース6写真:

ケース6写真:

使用方法・配布形態について

実際に缶詰を販売している上述の6軒以外に、ルアンパバーン県やウドムサイ県で話を聞いた商店の多くが缶詰について知っており、また実際に食べたことのある人や受け取ったことのある人たちもいた。以下、缶詰について語ってくれた12ケースについて記す。

ケース7(ルアンパバーン県パークウー郡K村の商店):何年か前に村の作業で土地を掘ったときにこの缶詰が労働の対価として配られた。売りに来る個人や業者はいないが、ウドムサイ県ガー郡で小学校教師をしている弟がこの缶詰を持ってきてくれたことがある。小学校で支給されているらしいが弟は家族や親戚に配っている。それらが学校で余ったものなのかどうかはよくわからない。

ケース8(ルアンパバーン県ナムバーク郡S村の商店):隣のウドムサイ県サイ郡の小学校でこの缶詰を配っている。生徒1人に缶詰1缶とご飯1袋が支給されていると聞いたことがある。

ケース9(ウドムサイ県サイ郡L村の商店):この缶詰は知っている。近隣の小学校で配布していた。子どもが持って帰ってきたので食べたこともある。教師が横流しているという話は聞いたことはあるが、自分の村では売り物ではないとみんな知っているのでこの辺りでは販売していない。

ケース10(ウドムサイ県サイ郡LA村の商店):2年前に近隣の小学校で配っていた。1人月に7缶だったと思う。缶詰だけでなく油のようなバターのような栄養剤やご飯も支給されていた。今は配っていない。近隣の人々は売ってはいけないものだと知っている。

ケース11(ウドムサイ県サイ郡L市場の商店):缶詰が郊外の小学校で配られていることを知っているが詳細は把握していない。

ケース12(ウドムサイ県フン郡市場の商店):子どもが学校の先生で以前3~4缶もってきてくれ食べたことはある。売りに来る人はいない。

ケース13(ウドムサイ県フン郡N村の商店):これは学校給食でご飯と食べるものである。通常は野菜などと炒めて提供されていると思う。子どもが家に持って帰ってきたので食べたことはある。

ケース14(ウドムサイ県パークベーン郡市場の商店):学校で余ったものを夏休みに入る前の5月に生徒に配っている。1人何缶かもらっていると思う。

ケース15(ウドムサイ県パークベーン郡市場の商店):これはプロジェクトの缶詰であり、小学生が年に3回くらい1人2~3缶支給されていると思う。昨年も今年も配っているはずだ。

ケース16(ウドムサイ県パークベーン郡L村の商店):学校給食で配っていて子どもたちが食べている。

ケース17(ウドムサイ県パークベーン郡S村の商店):通常は子どもたちが学校給食で食べるが、夏休みに入る前の5月に余った缶詰を生徒に配る。自分たちも食べたことはあるが美味しくない。

ケース18(ウドムサイ県フン郡P村の商店):学校で配られているのを知っている。食べたことはあるが美味しくない。旦那は学校の食堂建設を手伝ったら労働の対価としてこの缶詰が4缶支給された。

今回の調査で明らかになったのは4点ある。第1は一部で横流れしている可能性があること、第2は個人で得たものや支給された缶詰の一部は食べられずに販売されていること、第3は災害時や小学校給食以外の形で地域や村に缶詰が配布されていること、そして第4は、缶詰が他の商品(肉やお菓子など)と交換されていることである。

  1. 横流れの可能性

    調査を行った182軒中缶詰を販売していたのは6軒あった。なかでも横流れしている可能性があるのはケース1と2である。ケース1はルアンナムター県ルアンナムター郡の軍人が何らかの形で缶詰を入手し大量に所持しているという話である。もちろん近隣の小学校建設や道路建設などを軍人が手伝い、その対価として缶詰が支給された可能性はある。しかしそれ自体WFPが定める活用方法とは異なる可能性が高い。また軍が大量に保管しているとなれば労働の対価ではない可能性が十分ある。

    ケース2は何らかの形で建設会社に流れたと考えられる。もちろん建設会社が村の道路建設を行い、その対価として村から缶詰を支給された可能性もあろう。しかし山岳農村地域の村の道路建設であれば、通常は村人が無料で労働を提供する。仮に村から労働の対価が支払われるならば、ケース6の教員宿舎建設を手伝った人、ケース7の村の労働を手伝った人、ケース18の学校の給食場建設を手伝った人のように缶詰は直接村人に支給されるのが一般的である。建設会社が行う村の道路建設ともなれば大がかりな工事であり、企業が缶詰を対価に建設を請け負うとは考えられない。建設会社がケースで大量に売り歩いていることからは何らかの形で流れている可能性が高いといえる。

    さらにケース4のように道路建設に携わった労働者が労働の対価である缶詰を売りに来て現金化しているとの証言もあった。ケース2と4が同じ建設業者かは不明だが、以上2つのケースからは県内の建設業者が何らかの形で大量に缶詰を保有していると考えられる。

    流通の範囲は広範囲に及ぶと推測される。偶然の要素が強いが、ケース1のようにルアンナムター県で配布された缶詰がウドムサイ県で売られていた。また、ヴィエンチャン県の市場では、以前業者が売りに来たことがあると話す店主もいた。北部全域で何らかの形で販売されている可能性は十分ある。

  2. 個人で得た缶詰の販売

    以上2件以外の4件は、子どもが持ち帰ったもの、労働の対価で得たもの、村で支給されたものを売っているケースである。WFPの詳細なルールが不明であるため推測の域を出ないが、学校で配られたもの、小学校の給食場建設や村の労働を手伝った際の対価として配布されたものを個人が食べずに販売することは特に問題ないのではないかと考えられる。聞き取りを行った多くの商店が援助品であり売ってはいけないものと認識している一方で、個人的に得たものを売るのは問題ないと考えているようであった。

  3. 多様な活用方法

    以上のように、缶詰は災害時や給食だけでなく、子どもにそのまま支給、村の労働の対価として支給、道路建設の対価として支給、村人に支給するなど、多様な形で配布されていることがわかった。また災害時に配布された村の一部の人が受け取れなかったということもあり、本来のルール通りに支給されていない可能性が高い。

    缶詰がどのような形で村に配布されるのか詳細を承知していないが、仮に小学校に支給される缶詰が村長を通じて小学校に届けられる、または、村長と小学校教師が共同で管理しているならば、一部が村長の裁量により村の事業で活用されていると考えられる。ただしそれは決して悪いことではないだろう。WFPのルールには反するかもしれないが、村全体に裨益する事業の労働の対価として支給されているのであれば本来の主旨には沿っているともいえる。

    一方で、一部の村人が指摘するように、村長が個人的に活用している可能性は否定できない。教師も家族や親戚に配っており、ケース7や12のように実際に身内の教師からもらった人もいた。これらはWFPのルールに反するのではないだろうか。つまり、缶詰が村や小学校に届いた後は、村長や教師の裁量で一部が本来の目的から外れて使用されている可能性がある。

  4. 配布品が食べられていない可能性

    缶詰があまりおいしくないと指摘する人が多く、配布されたものの食べずに販売するか、子どもたちが商店でお菓子と交換するケースもあった。上述した以外の村人でも、タイの缶詰(1缶5000キープ)の方が美味しいのでみんなそちらを食べるという人が多かった。

援助品が本来の目的から外れ販売されることはラオスに限らず途上国ではよくある。したがって、ラオスで日本支援の缶詰が市場で売られていたことについて特に驚きはない。ラオスで活動する日本の方々からも、「だいぶ前だが日本が支援したコメがシェンクアンの市場で売られていた」「日本支援のコメがサムヌアの市場で売られていたのをみたことがある」「以前、日本が支援した農薬がヴィエンチャンの市場で売られていた」「北部のある地域で村長の家でご飯を食べていたら援助機関支援の缶詰や食糧がでてきた」「子どもの栄養食として配られているピーナッツバターみたいなものは食べられずに捨てられている」という話を聞いた。したがって今回の缶詰の横流れの可能性は決して特別なケースではないだろう。

今回筆者がまわった182軒という数は多いかもしれないが、ラオスの市場や道路沿いに存在する商店の数からすればほんの僅かである。したがってさらに多くの商店で缶詰が売られていると考えるのが妥当だろう。また筆者が今回調査を行った場所は幹線道路沿いであり、南部のセコーン、サラワンの奥地、ポンサリーやルアンナムターの貧困地域よりは比較的豊かな地域である。そこでもこのように販売され、郡の大きな市場にも大量に出回っているため、山岳貧困地域では村長や教師が缶詰を横流しし現金化している可能性はさらに高いのではないだろうか。そして冒頭の関係者が販売されているのは初耳というように、WFPなど本缶詰に携わる機関は実態を把握していないと考えられる。

ちなみに日本が生産し、WFPを通じてラオスで援助品として配布された缶詰は、ラオス人ではなく日本人である筆者の食卓に届き美味しくいただいた。日本人の口には合うようである。

脚 注


  1. 外務省ウェブサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/zyoukyou/h25/140312_5.html)。2017年5月13日閲覧。
  2. 同上。
  3. 外務省ウェブサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/data/gaiyou/odaproject/asia/laos/contents_01.html#m012508)。2017年5月13日閲覧。
  4. 同上。
本稿の内容及び意見は執筆者個人に属し、日本貿易振興機構あるいはアジア経済研究所の公式意見を示すものではありません。