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タイにおける学術誌評価——Thai-Journal Citation Index(TCI)の成果と課題——

海外研究員レポート

バンコク

小林磨理恵
2016年6月発行
PDF (1.52MB)
1. はじめに
学術誌の影響度を測る一指標として、雑誌の平均被引用数を示すインパクトファクター(文献引用影響率)が定着をみて久しい。これはトムソン・ロイター社のJournal Citation Reports (JCR)において毎年更新され、研究者にとっては論文の投稿先を選定するツールとして、また図書館員にとっては蔵書構築の参考資料として有益な指標である 1

一方、ひとつの「問題」として指摘されるのは、JCRがインパクトファクター付与の対象として選定する学術誌は、大部分が欧米圏で出版された学術誌、あるいは主に英語の論文が掲載される学術誌であり、アジア・アフリカ諸国で出版される学術誌が多く含まれないことである。もとより非欧米地域で出版される膨大な数の学術誌を精査することには限界が伴う。

こうした限界に応える可能性を持つのが、アジア諸国側の独自の動きである。1989年に始動した中国のChinese Science Citation Database(CSCD)が長い歴史を有するが、東南アジア諸国にも、自国で出版された学術誌の引用索引(Citation Index)を作成し、「インパクトファクター」 2 を算出する試みが存在する。2011年にマレーシア、インドネシア、フィリピンが引用索引データベース構築の検討を開始した。ASEAN経済共同体(AEC)も追い風となって、現在はASEAN Citation Index(ACI)として、ASEAN10カ国の引用索引を統合する取り組みへと発展的に展開している 3

この一連の東南アジア諸国の動きを牽引したのは、タイであった。タイでは2001年以降、Thai-Journal Citation Index(以下TCI)センターが中心となり、学術誌の引用索引を含む文献データベースを構築して、インパクトファクターを算出してきた。TCIの成果が、ACIおよび東南アジア諸国の現在の取り組みの基盤をなしているといってよい。本稿では、タイにおいて学術誌評価が制度化された経緯とTCIデータベースの使用方法について報告する。また、本年5月に開催されたTCIの第10回シンポジウムの様子を紹介する。