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エチオピアの高等教育

海外研究員レポート

エチオピア

2011年8月発行
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エチオピアでは、急速に教育機会が拡大している。初等教育での就学率の拡大には目を見張るものがある。1年生から8年生までの総就学率は、1990年には32%に過ぎなかったのが、2004/05年度に79.8%、2009/10年には95.6%(男子98.7%/女子93%)と急増している(MoFED, 2010)。車も入れない農村部でも3年生までの小学校が設立されていることが多い。

一方、高等教育も拡大しつつあるものの、初等教育と異なるのは、10年生、12年生の段階で統一試験によりふるいにかけられてしまうことである。やる気があっても成績がついていかなければ、そこで彼/彼女の学校教育は終了である。特に10年生での統一試験は、首都のアディスアベバでは滅多に落ちることがないと言われているが、地方農村部では十分な点数を確保できず、進級できない場合も多い。浪人して再度試験を受けることも可能だが、その場合は必要とされる成績は現役生よりもハードルを上げられてしまう。また、全国で同じ規定が適用されているのかは不明だが、アムハラ州農村部にある筆者の調査地では、学校のキャパシティが限られているという理由のもと、最近では卒業後数年たつと統一試験自体を受けられなくなったらしい。

10年生の統一試験によって、上位成績から、プレパラトリーという大学進学を目指すコース(引き続き無料)、公営の専門学校、民間の専門学校、そして進学せず修了というように生徒の進路が振り分けられる。政府系と民間の専門学校の質的レベルは、政府系専門学校の方が高いとは必ずしも限らないが、学費に関していえば、民間の専門学校の方がはるかに高額となる。生徒の家庭の所得レベルによっては、プレパラトリーに進学できなければ、そこで進学をあきらめる場合も多い。

このような状況下で、情報量の少ない農村部において進学の決定も難しい。筆者の調査地では、農村部にとどまったままでは10年生修了も専門学校修了も等しく就職困難であるという判断のもと、専門学校進学はお金と時間の無駄ということで、専門学校への進学が選択肢に無い場合も多い。しかし、専門学校に進学し、さらに2年間の職業経験を積むと、再度大学進学のチャンスが訪れる。都市部からみたら僻地といえるこの調査地で働いている薬剤師と助産師の若者は、二人とも大都市であるバハルダル出身で、この2年間がんばって働いて学位のとれる大学に進学するという希望を私に語ってくれた。

このような若干イレギュラーな大学進学へのルートについては、調査地では知っている若者もいれば、まったく知らなかった若者もいる。たとえ知っていても、プレパラトリーとは異なって専門学校は学費を払わなければならない。公営の専門学校は学費が安いが、村レベルの役人で800ブル位(約4000円)の月収しかないなかで、学費とこどもの下宿代のための現金収入を確保するのはたやすいことではない。民間の専門学校に進む場合は、学費だけで3年間で3万ブル(約15万円)かかると言われている。したがって、あまり成績が良くない場合は、たとえ将来的に就職できる確率が大幅に高くなるとしても、目前の金銭的な問題で専門学校への進学は難しい。

アムハラ州農村部において土地不足が指摘されて久しい。また、分割相続が中心であるため、土地はさらに細分化しつつある。このような状況下では、十分な農地の確保が見込めない若者にとって非農業就業が重要となるわけだが、その場合はある程度の教育レベルが必要とされる。また、農村部を出て都市部などで職を探す場合、雇用競争に勝つためには10年生以上の「学歴」が必要となるであろう。

このような状況はここ数年のものであり、エチオピアでは急激な教育のインフレが起こっている。調査地で、10年生で統一試験に失敗し、進学できなかった20才の女性にインタビューした時の彼女のコメントが心に残る。「母の世代では、10年生まで勉強していれば、女性としてはすごいことだった。今の10年生は(進学できなかったということを示す)最低限の学歴でしかすぎない」。


(参考文献)
MoFED 2010. Ethiopia: 2010 MDGx Report: Trends and Prospects for Meeting MDGs by 2015, Addis Ababa, Ministry of Finance and Economic Development (MoFED).