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インフレと格闘するエチオピア

海外研究員レポート

エチオピア

2011年4月発行
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2011年4月14日、エチオピア統計局(Central Statistical Agency)は、3月の消費者物価指数が昨年同月比で平均+16.5%、穀物で+25%であったことを発表した(2011年4月16日付The Reporter紙、4月17日付Capital紙)。その原因としては、2010年9月の大幅な通貨切り下げ、中東の政治不安などによる原油の高騰や、穀物およびコーヒー価格の高騰などが挙げられている(2011年4月16日付The Reporter紙、4月17日付Capital紙。また、原因の筆頭として挙げられるのが、昨年行われた為替レートの引き下げである。昨年9月に現地通貨であるブルの価値が17%引き下げられ、ブル安ドル高の傾向は現在に至るまで続いている(2010年9月1日時点で$1=13.70ブルだったのが、2011年4月20日現在$1=16.77ブルとなっている)。3年ぶりにエチオピアを訪れた私も、まずブル建てでの価格にギョッとした後、日本円に換算して以前と同じ価格、場合によっては安くなっていることに気がつき、ホッとするという経験を繰り返している。逆に言えば、外貨にアクセスできない人々にとっては、耐え難いインフレーションであるといえよう。

次に、原油価格の高騰も大きな問題となっている。原油価格については、公社であるEthiopia Petroleum Enterpriseが一括して輸入し、補助金によって価格を抑えているため、他の東アフリカ諸国よりも若干低い価格ではあるものの、昨年10月から今年4月までの間にガソリン価格が35%上昇している(4月16日付The Reporter紙、4月17日付Fortune紙)。アディスアベバを網羅している市民の足であるミニバスも、段階的に乗車運賃を値上げしている。

また、世界的な穀物価格上昇の傾向も無視できないが、コーヒーの国際価格の上昇も食料の消費者物価指数を引き上げている要因の一つである。コーヒーは、エチオピアの主要な輸出産品の一つであるが、同時に生産量の約半分が国内消費に回される。国内価格は輸出価格とほぼ連動して値動きするため、コーヒーの国際価格が3月の時点で昨年同月比で79%上昇しているのに合わせて(ICO HP: http://www.ico.org/prices/p2.htm)、エチオピア国内のコーヒーの価格も大幅に上昇しているのである(4月17日付Capital紙)。

エチオピア政府も、その状況を傍観していたわけではなく、様々な対策を行っている。1月には、銀行の利率を引き上げ、生活必需品18品目について価格シーリング制をした。また、導入、急騰が伝えられているセメントについては新たに二工場を建設して年内の国内生産をめざし、さらには昨年度には民間の賃金の基準となる公務員の給与の引き上げを行っている(1月16日付Capital紙、Fortune紙、2月4日付Sub-Saharan Informer紙)。

ここでは特に1月に導入された価格シーリング制を取り上げたい。価格シーリング制の対象となったのは、18品目(パーム油、粉ミルク、米、ノート、ボールペン、洗剤、粉石けん、砂糖、バナナ、パスタ、オレンジ、パン、肉、ビール、スチールシート、紅茶の葉、ソフトドリンク、ペンキ)である(1月9日付Capital紙)。価格シーリング制の導入は、エチオピア暦のクリスマス・イブである1月6日に唐突に発表されたこともあり、市場も消費者もかなり混乱することとなった。小売店は、設定された価格を張り出してその価格で販売することを義務づけられ、これを守らない小売店(売り惜しんだ場合も同じ処分をうける)が少なくとも100以上摘発され、閉店に追い込まれた (1月16日付Fortune紙)。唐突な価格シーリング制の導入によって、すでに仕入れていた商品についてもそれを下回る金額で販売せざるをえず、損害を被った小売店も多かったようである(1月16日付Capital紙)。また、砂糖、食用油、オレンジといったいくつかの品目は、一時的ではあったが実際に市場から姿を消すこととなった。

価格シーリング制は、2月まではある程度の価格上昇鎮静の効果はあったようであるが、3月にはインフレ率も再び上昇することとなった。価格シーリング制については、経済学者からは、効果は限定的であり導入方法も拙速だったと批判されている(1月16日付Fortune紙、4月17日付Capital紙)。価格設定はコストを考えずに設定されており、選ばれた品目も、ビールやソフトドリンクが含まれているなど貧困層を考慮したものとは言い難いこと、そして、期限は明言されていないものの無期限ではないという中途半端な状況によって闇市場の懸念があることなどが指摘されている。

価格シーリング制に加えて、エチオピア政府が模索している新たな方策は、政府自ら公社を通じて商品を輸入し「適正」価格で販売するというものである。現在すでに砂糖と食用油で開始されており、小麦粉など品目を拡大する予定だという(4月17日付Capital紙)。

国内要因というよりも、世界経済から大きな影響を受けた結果といえる現在のインフレに対して、エチオピア国内での対策の効果は限定的にならざるを得ない。このインフレを契機に、政府が価格経済統制を図り、セメントの国内生産など輸出代替工業化にも似た政策を遂行するという状況は、これまで政府が経済自由化を進めてきたことを考えると非常に興味深い。また、価格統制に対して、限定的とはいえある程度は市場が反応し、また政府に従わないとあっという間に取り締まられてしまうという点も、国家権力が社会に深く浸透しているエチオピアの政治・経済の特徴といえるかもしれない。

エチオピアは、2003/04年度以降年平均11%のGDP成長率をキープし、順調な経済成長を遂げており(財務経済開発省HP:http://www.mofed.gov.et/)、英The Economist誌は、2001年から10年の間にもっとも急速な成長を遂げた国ベスト10の5位にエチオピアを選んでいる(2001年1月18日、UK版)。政府は2011年も引き続きこのペースを維持すると鼻息が荒いが、このインフレがエチオピアの経済成長にどのような影響を及ぼすのか気になるところである。