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世界経済危機後の東アジアの貿易動向
(Recent Trade Development of East Asia after the Global Economic Crisis)

その他

大関 裕倫 著
2009年12月発行

本資料は、日本貿易振興機構アジア経済研究所(IDE-JETRO)及び東アジア・ASEAN 経済研究センター(ERIA)の主催による国際シンポジウム「世界経済危機と東アジア経済の再構築」(2009年12月1日、東京)にあたって、参加者の方に基礎的データを提供するために作成、配布されたもの。

全文 pdf (725KB)
1. グローバル・インバランス
 (1) 主要国の貿易収支
 (2) 主要国の対米貿易収支
2. 世界経済危機後の貿易動向(鳥瞰図)
3. 東アジアの貿易構造
 (1) 長期的傾向
 (2) 世界経済危機後の動向
4. まとめ



1. グローバル・インバランス


(1) 主要国の貿易収支
リーマンショックまで、米国、EU15は大幅な貿易赤字、中国、日本、ASEAN5は貿易黒字を計上。リーマンショック以後は、米国、EUの赤字幅が縮小するとともに、中国が2009年に入ってから大幅に黒字を縮小、日本も一時赤字に転落するなど黒字が縮小。ただし、直近では(季節要因の影響も考えられるものの)米国の赤字が再び拡大の兆し。

Figure 1 The trade balances of major countries


(2) 主要国の対米貿易収支
米国との貿易収支を見ると、日本、中国、韓国、ASEAN5、インド、EU15すべての国・地域が対米黒字を計上。そのなかでも特に中国、EU15、日本の黒字は顕著。

リーマンショック以後、大きな黒字を抱えていた中国、EU15、日本の黒字幅は急速に縮小。ただし、直近では対米輸出の持ち直しとともに、(季節要因の影響も考えられるものの)貿易黒字も徐々に回復(拡大)の兆し。

Figure 2 The trade balances of major countries with US



2. 世界経済危機後の貿易動向(鳥瞰図)


東アジアを取り巻く貿易は、2008年Q3までプラス成長(ドルベース輸出額、前年同期比)を続けていたが、2008年Q4に多くの国で前年比マイナスに転じる。東アジアのなかでは、中国向け輸出やASEAN5域内輸出の落ち込みが目立つ。なお、この時期はまだ日本への輸出は比較的堅調。

Figure 3-1 Trade flows (Q3 of 2008)


Figure 3-2 Trade flows (Q4 of 2008)


2009年Q1になると、すべての国で輸出がマイナス(ドルベース輸出額、前年同期比)に転落し、その減少幅も拡大。東アジアの輸出は、域内、米国、EU15向けとも前年同期比▲30%前後の大幅な低下を記録。つづく2009年Q2は依然として大幅なマイナスが続いているものの、輸出の減少幅はやや持ち直しの動きが見られる(月次データで見ると7月以降も持ち直しの動き)。

Figure 3-3 Trade flows (Q1 of 2009)


Figure 3-4 Trade flows (Q2 of 2009)



3. 東アジアの貿易構造


(1) 長期的傾向
a. 域内貿易
東アジアの域内貿易は、生産ネットワークの展開などを反映して、EU15やNAFTAと比べて、中間財のシェアがきわめて高く、反対に消費財のシェアが低い。将来の課題として、東アジアのなかで消費財のシェアを高めていくことが必要。

Figure 4 The share of goods in internal trade by region


b. 東アジアの相手地域別の輸出
EU15や米国向け輸出においては、東アジア域内向けに比べて、中間財のシェアが低く消費財シェアが高い。特に米国向け輸出において消費財シェアは直近で30%台半ばに達している(域内向けではわずか10%強)。

Figure 5 The share of goods in East Asian export by destination


(2) 世界経済危機後の動向
a. 財別・輸出先別動向(年次)
財別に2009年と前年(いずれも1~7月ベース)を比較すると、各財とも前年割れ。
※データの関係で輸出国は、ASEAN5、日本、中国、韓国の8カ国で集計(以下同じ)。

Figure 6 The export of East Asia by types of goods (World total)


そのなかで消費財について輸出先別に見ると、(i)東アジアは、個々の国は小さいが、合計すれば、米国には及ばないもののEU15向けに匹敵する規模。しかし、(ii)その内訳は日本とASEAN10が大半(2009年は日本向けが比較的健闘)。

Figure 7 The export of East Asia by destination (Consumption goods)


中間財はASEAN10向けが米国やEU15を凌駕、中国向けも米国、EU15に匹敵する規模。しかし、2009年は大きく減少。

Figure 8 The export of East Asia by destination (Intermadiate goods)


資本財については、東アジアを合計すれば、米国、EU15を上回る規模。東アジアのなかではASEAN10、中国向けが大きい。2009年はどの地域向けにも減少しているが、特にEU15向けの落ち込みが大きく、中国向けが比較的落ち込みが緩やか。

Figure 9 The export of East Asia by destination (Capital goods)


b. 財別・輸出先別動向(月次)
◆5品目別の動向(Figure6の月次動向)
リーマンショック以降、東アジアの輸出は各財とも輸出額が減少。しかし、2009年2月を底に金額ベースで回復に向かう。そのなかで消費財の動きを見ると、消費財シェアは緩やかに上昇。2009年2月に他の財よりも回復が遅れたため急にシェアを落とすが、その後は回復に向かう。

Figure 10-1 The export value of East Asia by type of goods (World total)


Figure 10-2 The share of goods against total export of East Asia


◆消費財の輸出先(Figure7の月次動向)
消費財の輸出先としては米国が圧倒的。しかし、東アジアも個々の国は小さいが、合計すればEU15に匹敵する規模。

リーマンショック後、米国、EU15、東アジア向けとも輸出額は減少したが、米、EU向けの減少が相対的に大きかったため、東アジアのシェアが上昇。特に日本への輸出が堅調でシェア上昇が顕著。しかし、直近では、対米国、EU15 輸出の回復とともに、アジアのシェアは低下。

Figure 11-1 The Export value of East Asia by destination (Consumption goods)


Figure 11-2 The share of destination against total exports of East Asia (Consumption goods)


◆中間財の輸出先(Figure8の月次動向)
中間財(半製品・機械部品)は東アジア域内向けのシェアが圧倒的。東アジア域内向け輸出は、リーマンショック以降、輸出額が大きく減少したため、シェアも若干低下したが、直近では輸出額の回復とともにシェアが再び上昇。

Figure 12-1 The export value of East Asia by destination (Intermediate goods)


Figure 12-2 The share of destination against total exports of East Asia (Intermediate goods)


◆資本財の輸出先(Figure9の月次動向)
資本財については、東アジアの規模が米国、EU15を上回る。東アジアのなかではASEAN10、中国向けが大きい。リーマンショック後、各地域とも輸出額は低下したものの、シェアでは、EU15向けが低下する一方、中国、ASEAN10向けが上昇し、東アジア全体として上昇。

Figure 13-1 The export value of East Asia by destination (Capital goods)


Figure 13-2 The share of destination against total exports of East Asia (Capital goods)



4. まとめ


東アジアを取り巻く貿易は、リーマンショック後に大きく減少。しかし、2009年第1四半期を底に、金額ベースで回復に向かう(前年同期比伸び率で見ても緩やかに回復)。

対米貿易収支のインバランスは、リーマンショック後に大きく縮小。ただし、直近では各国の対米輸出の回復とともに、対米黒字も徐々に回復(拡大)の兆し。

東アジアの貿易構造としては、消費財輸出先として米国、EU15のシェアが大きく、東アジア域内では中間財が中心。今回のリーマンショック後の変化を見ると、消費財については米国、EU15向け輸出の大幅な減少に伴い、一旦は東アジアのシェアが高まったが、輸出の回復に伴って、東アジアのシェアは徐々に低下している。一時的な調整があったものの、構造が変化したとまで言うのは時期尚早。

消費財の輸出先として東アジアを見ると、
a. 規模としては、個々の国は小さいが合計すれば、(米国には及ばないものの)既にEU15に匹敵する規模まで成長している。・・・・・しかし、
b. 現状では、輸入国として日本のみが突出している(合計すればASEAN5がこれに次ぐ)。今回の場合は日本の輸入が2009年初頭まで比較的堅調であったことが、消費財輸出先としてのアジアのシェアを支える大きな要因だった。将来的には東アジア内の幅広い国の間で消費財貿易を高めていくことが課題。

なお、中間財輸出についても、東アジアの輸入国内で最終財に加工され消費されていれば域内需要と考えられるが、貿易データからは検証が困難。