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インドの第16次連邦下院選挙—— ナレンドラ・モディ・インド人民党政権の成立 ——

機動研究成果報告

近藤 則夫  編
2014年12月発行

はじめに
インド国民会議派(以下「会議派」)率いる統一進歩連合(UPA)政権の任期満了に従い,2014年4月7日から5月12日にかけて10回に分けて連邦下院選挙が行われた 1 。連邦下院の定数は545議席であるが,そのうち2名は大統領によってアングロ・インディアン・コミュニティから選出されるため,543議席が選挙によって選ばれる。5月16日に一斉開票された選挙結果は会議派の歴史的な惨敗,インド人民党(BJP)の大勝に終わった。BJPは首相候補としてグジャラート州首相であったナレンドラ・モディを前面にたて,国民民主連合(NDA)の枠組みを維持しつつ選挙戦を戦い,はじめて単独過半数の議席を確保した。会議派は19.3%の得票率で44議席を得るにとどまったが,それに対してBJPは31.0%の得票率で282議席を獲得した。会議派とBJPの得票率の比率が1対1.61なのに対して獲得議席が1対6.41であるのは小選挙区制の影響である。単独過半数政権が出現したのは 1984年に会議派が大勝したとき以来である。本研究報告は第16次連邦下院選挙がこのようなドラスティックな結果となった要因,および,その背景にある近年の社会変動の様相を分析し,さらに,新政権の方向性を探ることを目標としている。

以下の章ではまず,第1章で選挙に至る背景,および,インド全体の選挙分析を行う。つぎに第2章から第5章において州別の分析を簡単に行い,そのうえで新政権の性格の分析に進む。インドはきわめて多様な政治,社会構造を有するが,それが集約される基本的単位は州である。よって州ごとの分析は選挙政治の実態をよりよく把握するために必要となるからである。北部や西部でインド人民党が躍進した理由はモディ人気が大きな要因であるが,しかし,各州をより子細に観察すると,各州独自の要因がBJPの躍進にかなりのちがいをもたらしていることがわかる。一方,東部や南部の多くの州でBJPがいまだにしっかりとした地歩を築けていない要因は,各州独自の社会構造,政党政治の特質などに分け入って把握しないと理解できない。州レベルの分析が必要とされるゆえんである。

新政権を生み出した選挙プロセスを理解したうえで,つぎに新政権の性格を政治,経済に分けて第6章,第7章,および,第8章で分析する。その際,経済的特徴はインド経済のマクロな側面に加えて,とくに社会保障・福祉および労働政策についての分析を行った。これらの分野は経済自由化が開始された1990年代から,改革が急がれている分野であるにもかかわらず,大きな方向転換がみられなかった分野であるが,新政権成立後,この数カ月はかなり大きな変化の兆しがみえており,その分,注目されるからである。最後の第9章では新政権の対外関係をまとめた。新興国として注目を集めるインドが新政権発足にあたって国際的にどのような立ち位置にあるか検討することはインドの進む道を考えるうえで重要なポイントとなるからである。

最後に,本書はアジア経済研究所で行われた機動分析の成果である。分析はおおむね2014年9月までの観察に基づいて行われていることを述べておく。

  1. 当初の予定は9回であったが,4月8日に選挙委員会はミゾラムでのNGOや学生によるゼネストのため,投票日を4月9日から11日に変更した。これにより投票日は10回となった。

表紙/はじめに (680KB) / 近藤 則夫

第1章
第2章

北部における選挙 (901KB) / 近藤 則夫

第3章

東部における選挙 (984KB) / 佐藤 創

第4章

西部における選挙 (822KB) / 太田 仁志

第5章

南部における選挙 (774KB) / 三輪 博樹

第6章
第7章
第8章
第9章
終章

——新政権の展望—— (662KB) / 近藤 則夫