開発スクール(IDEAS)
開発専門家を目指す皆さんへ
開発専門家とは
開発専門家とは、援助機関やNGO、国連機関等の管理・事務・調査研究部門で働く、国際協力・国際開発全般に関する専門家です。国際協力・国際開発を円滑に進めるために開発専門家に期待される専門性、役割は何なのでしょうか。開発専門家の任務とは、開発に関わる全ての人々に、必要な情報を共有させ、彼らの利害を調整し、合意形成に導くことを通じて、開発の成果を上げることです。一般に開発には、次に挙げる3つのタイプの人々が関わっています。第一に、受益者たるべき発展途上国の人々とその代表者である政府、第二に、前述のような個別分野の専門家としての「その道のプロ」、第三に、開発のために資金や物資を供与するドナー、です。ドナーには、援助供与国政府のみならず、援助の財源となる税金を支払う援助供与国の国民や、NGOとそのNGOを支える会員やスポンサーが含まれます。これら三者は端的に言ってしまえば、それぞれに住む世界が異なり、互いの意図、背景、制約条件等々を理解し合うことが容易ではありません。
具体的に言えば第一に、発展途上国の人々の生活の実態を、援助供与国の人々や「その道のプロ」が理解するにはかなりの努力が必要とされます。自然環境、周辺国との地理的関係、歴史的文脈、宗教による行動規範の違い等により、国毎に「常識」が大きく異なる場合があるからです。
第二に、「その道のプロ」がプロジェクトの現場で直面する技術的条件や制約は、プロジェクトの対象とされる人々にとっても、また援助供与国の人々にとっても、理解し難いことがあります。例えば専門家として派遣された産婦人科医がある妊婦にはどうしても帝王切開が必要だと判断した場合でも、その妊婦は医学的知識の無さから、自分の腹を切るということにどうしても同意できないかも知れない。また、そのような状況で家族の了解のみ得て本人の同意(インフォームド・コンセント: informed consent)なしに手術をしなければならない場合があるということは、援助供与国の人々にとって理解し難いことかも知れません。
第三に、資金を供与する側も様々な事情を抱えています。先進国といえども景気が後退すれば税収が減るので、政府開発援助に対する国民の支持が得にくくなります。政府開発援助の実施は一種の公共部門の活動ですから、現代では他の政府支出と同様にコスト削減が求められ、結果として供与額が減少することも稀ではありません。そういう事情を援助受け入れ国側が十分理解してくれるとは限らないのです。 このように、援助受入国の政府および受益者たる一般の人々、個別分野の専門家としての「その道のプロ」、援助供与国・機関の三者が、それぞれの事情を理解し合うことはかなりの困難を伴います。開発専門家は、発展途上国の実情や「その道のプロ」の知識や技術、そして援助供与国側の事情を知る人間として、これら三者の間の情報の格差を埋め、合意を形成する触媒としての役割が求められるのです。