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海外研究員レポート

セビリアの公共交通機関について

 

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050458

2018年7月

観光地でありアンダルシア州の州都であるセビリアでは、公共交通機関が発達している。周辺の郊外都市1を含めた都市圏人口は100万人を超えるため、バスや鉄道は通勤にも広く使われている。一方、セビリアの公共交通機関は観光地としてはけっしてわかりやすいとはいえない。ここでは、この公共交通機関の「わかりにくさ」と「使いにくさ」について、いくつかの背景となりうる事象とともに説明する。  

セビリアでは、市内バス、郊外バス、トラム、地下鉄、空港バス、市内観光バス、遊覧船、郊外鉄道、馬車、タクシーが主に郊外都市を含めたセビリア都市圏内の輸送を担当し、さらに、都市間バス、鉄道、高速鉄道、飛行機などが他の都市との接続を担当している。

主な公共交通機関
市内バス

Tussam社(セビリア市交通会社)が運営し、セビリア市内を広範囲にカバーしている。主に旧市街地(図1水色点線部分2)の外側を走るが、一部のバスは旧市街内にも乗り入れている(写真)。2018年現在の運賃は、バス内で現金で支払う場合は1トリップ=1.4ユーロ、バスカードを予め購入しチャージした場合は1トリップ=0.69ユーロ(乗り換えなしのカードを利用の場合)または0.76ユーロ(1時間以内の乗り換え可能なカードを利用の場合)となっている3。一部主要停留所では電光掲示板によりバスの接近情報がわかる。図1の赤線の一部が市内バスであるが、OpenStreetMapではすべての路線がカバーされているわけではない。空港バスもTussam社が運営しているが、市内バスとは料金が異なる(片道4ユーロ)。図1の星印の地点が空港バスの主要停留所であり、星印の地点間の移動にも利用可能だが、同じく4ユーロかかるため、一般の市内バスを利用したほうが安い。

図1 セビリアのバス、鉄道、メトロ、地下鉄

図1 セビリアのバス、鉄道、メトロ、地下鉄

(注)点線部(旧市街部)、星印(空港バス主要停留所)は筆者追記。
プラサデアルマスからサンタフスタ駅までの直線距離が2.4kmである。 (出所)OpenStreetMap

写真:旧市街部(アラメダデヘルクレス広場内)を走る市内バス(筆者撮影)

旧市街部(アラメダデヘルクレス広場内)を走る市内バス(筆者撮影)
郊外バス

Consorcio de Transporte Metropolitano社が運営。図2はバスの料金エリアである。このうち、斜線部がセビリア市、丸印がセビリア中心部(旧市街地付近)である。運賃はこの料金エリアをいくつまたぐかで計算され、現金、カードで異なるほか、セビリア市内、主要郊外都市市内の特別料金が存在する。図1の赤線の一部が郊外バスであるが、OpenStreetMapでは一部の路線しかカバーされていない。

図2 郊外バスの料金エリアとセビリア市域の関係

図2 郊外バスの料金エリアとセビリア市域の関係

(注)斜線部がセビリア市域。市域の東西幅が一番広いところで、西から東の端までの直線距離が18.1kmである。
(出典)アンダルシア州提供shapefileより筆者作成。
トラム4

Tussam社が運営。プラサヌエバからサンベルナルドの約2kmという短い区間をつなぐ。急速充電池を搭載したトラムであり、セビリア中心部では走行のために架線を必要としない。図1の紫線で示される。トラムは延伸が計画されている。

地下鉄(メトロ)

Consorcio de Transporte Metropolitano社が運営。現在1路線のみが開業している。図1の青線で示される。郊外部(セビリア市外)ではこのメトロ1号線に接続される郊外トラムの建設が進んでいるほか、メトロ、郊外トラムそれぞれに新設計画が存在する。

鉄道

Renfe社(スペイン政府出資の鉄道運営会社)が運営。他の多くの都市とセビリアをつなぐほか、近郊路線セルカニアスは通勤にも用いられる。サンタフスタ駅からは高速鉄道がコルドバ・マドリード・バルセロナなどに通じている。図1の緑線で示される。

観光地としてのセビリア公共交通機関の問題

セビリアの公共交通機関は理解すれば使いやすく、料金も低廉であるが、観光客や初心者にとってはわかりにくく、使いやすいとはいえない5。その最大の理由は、観光地が集中する中心部にトラム以外の公共交通機関が存在しないことである6。セビリアはヨーロッパで4番目に大きい旧市街を持つとも言われている。観光地の中心であるセビリア大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館の世界遺産、ユダヤ人街とスペイン広場は、徒歩ないしトラムや馬車との併用で移動可能であるが、それ以外の場所に行くことが難しい。これは主にバスのような大型車両がほとんどの旧市街の道を通過できないこと、さらに、旧市街を徒歩で移動するには広すぎることによる。結果として、観光客は観光地中心部のみを徒歩移動するようになり、他の観光スポットをまわる意欲を削がれている。  

同様に、図1の星印で示した主要停留所のとおり、空港バスも旧市街地の周辺をまわるようなルートをとっており、旧市街内のホテルへは徒歩で移動する必要がある。2階建ての市内観光バスも、旧市街内は一部しか入らず、重要な旧市街の観光地からは離れたところにしか停車しない。市内観光バスは運賃が20ユーロと非常に高く、前述のように主要観光地の前を通らない(通れない)ため、メリットに欠ける。  

他の多くの都市と同様、セビリアではバスターミナルと鉄道ターミナルが別々に位置する。高速鉄道や他の都市間鉄道のターミナルはサンタフスタ駅で、空港バスは発着するものの、それ以外のバスターミナルは、プラサデアルマス、プラド7の2箇所と一部機能がサンベルナルドに分散している。現在、プラドとサンベルナルドには地下鉄駅が、サンベルナルドにはRenfeの鉄道駅が隣接している。  

地下鉄はセビリア中心部と南西部、南東部の郊外を結ぶもので、市外とも接続している点では優れているが、それらの郊外地域には目立った観光地は少ない。  

市内バスは運行頻度も高く便利であるが、セビリア市内地域に限定される。図2にあるように、セビリア中心部は市域の西側に偏っている。通勤圏として機能しているセビリア西側の周辺都市は市内バスではカバーされていない。さらに、セビリア市内では市内バスと郊外バスの間でサービス区間に重複・競合がある。それぞれが別会社のため、ウェブサイトで他社のバス情報は表示されず、より便利なルートがあるかどうかを調べることが困難である。  

図2で示したように、市内バスだけでなく、郊外バスもサービス地域が偏っている。このため、どれが都市間バスで、どれが郊外バスの対象エリアなのかを判断することが難しい。都市間バスはインターネットやバスターミナルの窓口でバスチケットを購入する必要があるが、郊外バスのチケットは窓口では販売されておらず、バスの運転手に運賃を直接支払う。よって、発地が同じバスターミナルでも、行き先によっては、窓口に並んだ挙句チケットを窓口で買う必要がなかった、という事態が発生する。セビリアは周辺の観光都市への拠点ともなりうる。しかし、たとえばイタリカ遺跡はプラサデアルマスより郊外バスで10km、カルモナへはサンベルナルドから郊外バスで30km、ロンダへはプラドより都市間バスで120km、とそれぞれバス会社や発地ターミナルが異なる。  

各交通機関のウェブサイトの情報はほぼスペイン語のみで提供されている。バス停は道路工事や各イベントで頻繁に休止されるが、その情報もスペイン語のみで提供されている。最大のイベントであるフェリア(1週間におよぶセビリアの春祭り)では特別なTussam連絡バスが運行され、既存のバス路線のいくつかがルートの変更や休止を伴うが、ウェブ上で得られる情報は限定的である。都市間バスは複数の会社が運営し、同グループ内の別の会社名が掲げられた窓口でチケットが販売されているなど、どの会社がどの目的地にサービスを有しているかを判断することが難しい。  

タクシーは旧市街地では料金もそれほど高くならず、ドアツードアで移動可能なため利便性が高い。また、空港と市内の移動は固定料金8が適用される。しかし、タクシープールが利便性の高いところにあるとは限らず、タクシープールにタクシーがまったくいないことも多い。タクシーアプリの利用も、一方通行が多いセビリアではタクシードライバーとの通話が必要となり、スペイン語での道案内を求められる。スーツケースが多い場合には、空港やサンタフスタ駅とホテル間の移動にはタクシーが有用である。

観光客はどうすべきか

端的に言えば、セビリアの公共交通機関は観光地のそれとしてはあまり洗練されていない。スペイン4番目の大都市であるため市民の足と観光客の移動手段の両方の目的に適う必要があるが、基本的に近くの人(係員や住民)に毎回聞いて場所や路線を特定することを要求される。さらにマドリードやバルセロナと違い、セビリアではほとんど英語が通じない。その結果、観光客同士が不十分な知識のまま英語で聞きあうのが常態となっている。  

現状において、セビリアで観光客が移動するための注意点を簡単に述べる。  

第一に、どこに行くか、どの交通手段を使うかをあらかじめ調べておく。バスの場合は、会社名、行き先(終着地)、番号を控える。バス乗り場の位置はGoogleマップの地図だけでなく、可能な限りストリートビューで確認する。チケットがあらかじめインターネットで購入できる場合は先に購入する。市内バスの場合、往路と復路でバス番号や道路が異なる場合が多いため注意する。  

市内の移動には、C1~C4の旧市街の周囲を走る市内バスの理解が基本となる。C1(時計回り)、C2(反時計回り)はサンタフスタ駅、サンベルナルド駅、プラドバスターミナルを含む大回りの周回コースであり、C3(時計回り)、C4(反時計回り)は主に旧市街地の周辺を回る。旧市街地内を走る小型バスのC5は時計回りのみで頻度も少ないが、旧市街の雰囲気を楽しむために一周するにはよい。  

第二に、現地での交通に関する情報が非常にわかりづらいため、住民が一般的にするように周りの人に聞いてまわることが必要となる。空港や駅ではすぐ外に出ず、インフォメーションカウンターなどで方向を聞いてから外に出る。バスターミナルでもカウンターで乗り場の位置を聞くことを心がける。バスに乗る際もチケットを見せるだけでなく、自分の目的地に到達するかどうかを運転手に尋ねる。  

第三に、夏場においては15時~18時の最も暑い時間帯の観光を避ける。40℃を超えるような時間帯は、直射日光下の徒歩移動が危険なことは言うに及ばず、バス停で数分待つだけで熱中症になりうる。無理に外に出ずホテルやカフェで休む。夏の日没は21~22時であるため、入場時間に限りがある場所は午前中に、ない場所は18時以降に歩くことで体力を消耗することを防ぐことができる。理想を言えば、6月~9月の期間を避け、秋、冬、春に訪れるのがよい。

セビリアの公共交通機関の利便性改善のために

セビリアの公共交通機関の改善案について、いくつか述べる。まず、市や州の公式ウェブサイトでの情報発信を正確に、適時に行うべきである。旧態依然としたウェブの情報を刷新し、情報は各国語(少なくとも英語併用)で提供されることが求められる。Google Translateを使うことを考え、市・州・各交通機関のウェブサイトでは画像の中にスペイン語の説明を織り込むことをしないようにする9

第二に、Googleマップにおけるバス路線情報が正確になるよう働きかける。Googleマップでは、OpenStreetMap同様一部のバス路線しか登録されておらず、バス路線が実際の路線名と違っていることがあり、会社名が表示されず、時刻表も登録されていないことが多く、さらにはバス停の位置も多くが不正確である。住民にとっては既知であるため正確な情報である必要がなく、観光客にとっては利用価値に欠けるため使われないため、改善が進んでいない。  

第三にサンタフスタ、サンベルナルド、プラド、プラサデアルマスでの情報提供を正確にわかりやすくなるよう改善すべきである。各バスターミナルには液晶ディスプレイによる発着情報を見かけるが、これは都市間バス用であり、市バス・空港バス・郊外バスの情報はそもそも画面に表示されていない。前述のように観光客にとってはこのように別会社が別サービスを提供していること自体が認識されていないため、少なくとも会社別に情報を並べるよう、市や州が調整を図るべきである。  

各ターミナルでは乗り換えにおいて、どこになにがあるかの情報をよりわかりやすくすると同時に、乗り換え路にて日陰を多く作るよう、植樹や日よけの設置を増やすべきである。夏場は非常に高温になるセビリアでは、各ターミナルで乗り換えをするだけで体力を大幅に消耗してしまう。  

中長期的には、トラムのサンタフスタへの早期延伸が望まれる。トラムのサンタフスタ駅への延伸については計画があるものの、着工にはいたっていない。マドリードやコルドバと結ぶ高速鉄道のターミナルであるサンタフスタ駅と市の中心部が1本のトラムで結ばれることで、現状のわかりにくさは劇的に軽減されると思われる。さらに長期的な課題となるが、地下鉄の路線新設によって鉄道駅と全バスターミナルが結ばれるようになれば、観光客にとって大きな意味を持つだろう。

著者プロフィール

磯野生茂(いそのいくも)。アジア経済研究所海外研究員(在セビリア)。専門は空間経済学、東アジア・アセアンの経済統合、コネクティビティ分野。アジア経済研究所が開発している経済地理シミュレーションモデル(IDE-GSM)の拡張のため、現在欧州委員会共同研究センター(セビリア)との共同研究を行っている。


  1. 歴史的には別の都市だったものが近年になって近接性からセビリアの郊外都市とみなされるようになったものを含む。
  2. 本稿での定義はセビリア城壁(跡)の内側部分。
  3. その他、1日カード、3日カード、30日カード、1年カード、学生カード等がある。
  4. 正式名称はMetrocentro。
  5. 東京も同様であるとの指摘もできるが、都市圏人口が30倍も異なるため同列には議論できない。
  6. TussamのC5小型バスも存在するが、一方向のみの周回型で頻度も少なく使いにくい。馬車がセビリア大聖堂とスペイン広場をつないでいるが、50ユーロ程度と高価である。
  7. プラドデサンセバスティアンの略称。
  8. 週末等の割り増しあり。
  9. これは情報アクセシビリティの観点からも重要である。