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海外研究員レポート

オーストラリア――多民族社会の証?

 

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050352

岡田 雅浩

2018年3月

2017年10月に赴任して以来これまでを振り返ると、オーストラリアで巷間をにぎわせた大きな話題は三つあります。具体的には、連邦議会議員の二重国籍問題、同性婚の合法化、そして(個人的な関心ですが)ビクトリア州における重病で余命がかぎられた患者の安楽死幇助合法化です。これらを簡単に紹介します。

写真:オーストラリア連邦議会下院

オーストラリア連邦議会下院

議員の二重国籍問題

オーストラリアでは二重国籍が普通に認められている。しかし、連邦議会の議員は国益を代表するため、オーストラリア以外の国籍を持つことが憲法で禁止されている。ただ、その適用が今まで曖昧だったようで、ある議員が2017年7月に二重国籍であることを表明したのがきっかけになり、他にも二重国籍が疑われる議員が6人でてきた(その後、自分も二重国籍かもしれないという議員が何人も出てきた)。そしてその議席を認めるか否かでずいぶん話題になった。

特に話題になった理由は副首相がそのうちの一人であったこと、また与党は下院で野党に対して一議席しか優位に立っていなかったため、下院議員でもある副首相が議席を失うと少数与党になってしまうからだった。裁判所の判断が出るまで、与党は二重国籍を自覚していた人はともかく、自分が二重国籍であるかどうかを知らなかった議員は免責にすべきだと訴えてきた。しかし、結局、連邦最高裁判所が副首相を含む5人を違憲と判断し、該当者は辞職することになった。そしてその後12月に補欠選挙が実施され、8月にニュージーランド国籍を放棄した副首相はめでたく再選され、とりあえず与党は多数派にとどまることになった(しかし、その後、自身のスタッフを妊娠させたことが明るみに出て、この議員は2018年2月末に副首相の座を降りた……)。  

このニュースを見ていて面白いと思ったのはオーストラリアがさすがに移民の国であるということ。今回話題になった議員の多くが自分がどの国籍を持っているのか正確に把握していなかった。副首相の場合、オーストラリア生まれであるものの、父親がニュージーランドからの移民だったため、自動的にニュージーランド国籍も付与されていたらしい。そしてニュージーランドも副首相がニュージーランド国籍を持っていることを確認した。他の議員も似たような感じで、父親がイギリスからの移民だったとか、おじいさんがイタリア移民だったとか、いろいろだ。2016年のセンサスでは人口のうちオーストラリア生まれの人は66.7%であり、その他(つまり約3分の1)は外国生まれということで、確かにこれだけ外国生まれの人がいれば、その子供世代がどの国籍を持っているかを知るのは簡単ではなく、同情の余地がある。ちなみに、外国生まれの人口を多い順に並べると、イギリス(91万人、3.9%)、ニュージーランド(52万人、2.2%)、中国(51万人、2.2%)、インド(46万人、1.9%)、フィリピン(23万人、1%)である(2016年センサス)。

写真:オーストラリア連邦議会

オーストラリア連邦議会

同性婚合法化

連邦政府は、1億2200万豪ドル(約107億円)もの経費を費やして郵便による調査を行った(回答期間は9月12日から11月7日)。質問は一つ、「同性カップルの結婚を認めるように法律を変えるべきですか?」。答えも一つ。YesかNo。テレビCMでもしょっちゅう回答しましょうと呼びかけた。その結果、有権者の79.5%(1273万人)が回答し、61.6%の人が賛成、38.4%の人が反対を表明した。州レベル(6州、2特別地域[注] )の区分けではすべてで賛成が上回った。細分化した150の地域区分では、17地域で反対が上回り、その他133地域で賛成が上回った。参加率では女性が81.6%、男性が77.3%で、女性のほうが関心が高かった。年齢別では70-74歳の層が9割近い回答率でトップ、25-29歳の層が約7割で最低の回答率だった。18-19歳の最も若い層は78.2%で結構高かった。

賛成意見61.6%という数字は、私が(何の根拠もなく)想像していた数字よりも低い数字だったが、メディアでは圧倒的な賛成という感じで取り上げられた。そして、野党も反対するわけでもなく、その後の12月の議会であっという間に法案が通過した。法案通過のシーンがテレビで放映されたが、議場で皆総立ちになり歓喜に包まれたといった感じで、日本とは違う国民性を強く感じた。ただ過去2004年から2017年にかけて22回も同性婚合法化に失敗してきたらしいので、違う意味での達成感もあったのかもしれない。

今年はこの法案が成立したこと、また40周年ということもあり、有名なマルディグラ(Sydney Gay and Lesbian Mardi Gras)も盛大に行われた(とTVで放映された。私は参加していません……)。

安楽死幇助合法化
昨年11月に、オーストラリアで最初に末期患者の安楽死(voluntary assisted dying)を認める州(ビクトリア州)が現れた。これは患者に致死薬剤を要求する権利を与えるもので、両院で夜通しの100時間以上の審議を経て成立した。議会の交渉で対象者が余命1年の患者から半年の患者に絞られてしまったものの(例外あり)、概要は要求から(各種承認プロセスを経て)10日以内に薬剤をもらえること、患者は18歳以上で、正常な判断ができ、ビクトリア州に最低12か月居住し、耐えがたい苦痛をこうむっていること、原則として薬剤は自分で投与することなどである。アメリカのオレゴン州(合法)を参考に、年間120人程度が対象になるであろうと予測されている。こちらの議会通過シーンは抑制的なもので、感動を誘うものだった。
[注]

Australian Capital TerritoryとNorthern Territory.

写真の出典
  • オーストラリア連邦議会下院:筆者撮影。
  • オーストラリア連邦議会:By Jpp (Created by Jpp.) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html) or CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/)], via Wikimedia Commons.