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2017年インドネシアの十大ニュース

 

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050159

アジ研・インドネシアグループ

2018年2月

はじめに

アジア経済研究所では、インドネシアを研究対象とする研究者が毎週集まって、最新の出来事を現地新聞・雑誌などの報道に基づいて報告・議論する「インドネシア最新情報交換会」を1994年から続けています。毎年末には、その年のニュースを振り返って、私たち独自の「十大ニュース」を考えていました。これまでは内部のみで共有していた「十大ニュース」を、今回IDEスクエアの場で公開することにいたしました。

アジ研・インドネシアグループの考える「2017年インドネシアの十大ニュース」です。

1位 電子住民票(eKTP)汚職事件でゴルカル党党首が逮捕される

電子住民票を導入するにあたって特定業者と多数の国会議員の癒着が明らかになった汚職事件で、11月にゴルカル党党首で国会議長のセトヤ・ノファントが汚職撲滅委員会(KPK)によって逮捕された。セトヤは、さまざまな手段(容疑者指名の不当性を裁判所に訴え、体調不良を理由に入院し、 自作自演の自動車事故を起こすなど)を使ってKPKによる捜査から逃れようとしていた。この間、捜査を指揮していたKPKの主任捜査官ノフェル・バスウェダンが何者かによって襲撃されるという事件まで起きている(犯人はいまだ逮捕されていない)。(川村晃一

写真:セトヤ・ノファント国会議長(ゴルカル党党首)

セトヤ・ノファント国会議長(ゴルカル党党首)
2位 ジャカルタ州知事選挙で現職知事が敗北

2月の統一地方首長選挙でジャカルタ州知事選の投票が行われ、4月の決選投票を経てアニス・バスウェダン前文化・初中等教育相と企業家サンディアガ・ウノの正副州知事候補が勝利。華人でキリスト教徒の現職知事バスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)は、イスラーム保守派からの差別的攻撃を受けて得票を伸ばせず。(川村晃一

                     ↓アニス・バスウェダン現ジャカルタ州知事
写真:アニス・バスウェダン現ジャカルタ州知事写真:バスキ・チャハヤ・プルナマ前ジャカルタ州知事
                           バスキ・チャハヤ・プルナマ前ジャカルタ州知事↑
3位 政府、イスラーム保守派団体を解散

7月、急進的イスラーム保守派団体の「解放党」(ヒズブット・タフリル・インドネシア: HTI)が、憲法前文に書き込まれている建国五原則「パンチャシラ」に反する教義を持つ組織だとして政府により解散させられた。政府の解散決定にあたっては、その根拠となる法律(大衆団体法)を、「緊急を要する」として国会での審議を経ずに「法律代行政令」の形で修正したため、法的な妥当性の問題などが指摘された。(川村晃一

同率3位 現職のジャカルタ州知事が「反イスラーム的発言をした」として告発され、有罪に

ジャカルタ州知事選に向けた選挙戦のなかで、「イスラームを冒涜する発言をした」と告発されたアホック州知事に対する公判が、4月の投票日の後に結審。宗教冒涜罪で禁錮2年の実刑判決が下った。アホックは控訴をあきらめ、州知事を任期前に辞職し、収監された。(川村晃一

同率3位 政府による「パンチャシラ」強化の動き

ジャカルタ州知事選でイスラーム保守派の影響力が増していることが明らかになったのに対して、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権は、建国五原則「パンチャシラ」を公定イデオロギーとして教化する方針を示す。独立指導者だったスカルノ(初代大統領)が「パンチャシラ」を公式に発表 した6月1日が2017年から国民の祝日になるとともに、パンチャシラ思想を広めるための特別チーム(パンチャシラ・イデオロギー指導大統領作業チーム: UKP-PIP)が設置された。(川村晃一

写真:ジョコ・ウィドド大統領

ジョコ・ウィドド大統領
6位 汚職撲滅委員会(KPK)と国会の対立が深まる

KPKによるeKTP汚職事件の捜査でセトヤ国会議長をはじめ多くの国会議員が容疑者に指名されたり逮捕されたりすると、KPKに対する国会の反発が強まった。国会は、KPKの組織的問題を追及するために国政調査権を発動させ、独立性と権限を弱めようと証人喚問などを行った(最終的な勧告は年内には出されなかった)。(川村晃一

7位 フリーポート社の株式譲渡について基本合意が成立

1月、政府は、パプア州にある世界最大級の金銅鉱山グラスベルグ鉱山の採掘権を2021年までもつフリーポート・インドネシア社(米国の鉱業会社フリーポート・マクモランの子会社)に対して、鉱業事業契約(Contract of Work: COW)をIUP(鉱業事業許可)、IUPK(特別鉱業事業許可)に切り替え、さらに外国企業は保有株式をインドネシア政府・企業へ順次売却する(10年後には51%の株式を売却する)とする新しい規制を出した。フリーポート社は、この規制が1991年に締結した契約に違反すると主張し、政府との間で対立が発生した。交渉の結果、フリーポート社の採掘権の期限を2041年まで20年間延長することと、同社の株式51%をインドネシア側に売却することで合意が成立した。しかし価格や時期についてはまだ協議が続けられている。(濱田美紀

8位 マラウィ危機にインドネシア人が関与したことが明らかになる

フィリピン南部ミンダナオ島のマラウィを武装占拠した過激派組織「イスラーム国」(IS)系の勢力「マウテ・グループ」に、インドネシア人が少なくとも38人加わっていたことが明らかになる。ミンダナオ沖の海域では民間船員の誘拐事件や過激派戦闘員の密航が発生していることから、インドネシア政府の呼びかけで、フィリピン、マレーシアとの3カ国協議が開催され、6月には3カ国による空と海からの共同パトロールが開始された。7月にはインドネシアとオーストラリア政府の呼びかけで周辺6カ国による対テロ対策協議も開催されている。国内では、2月にバンドンで、5月にジャカルタで小規模な過激派の爆弾テロ事件が発生している一方、警察はテロ・グループの摘発を続けている。(川村晃一

9位 ジャカルタ・スカルノハッタ国際空港のインフラ整備が進む

航空需要の急速な高まりを受けて、ジャカルタのスカルノハッタ国際空港では拡張事業が進められ、第3ターミナルが建設された(総工費7.7兆ルピア)。2016年8月に国内線の発着が開始されるなど部分開業していたが、5月に国営ガルーダ・インドネシア航空が国際線の発着を移管し、本格的な運用が始まった。他社の国際線も順次移行しており、将来的には年間2500万人の利用者が見込まれている。9月にはターミナル間を結ぶ全自動無人運転のスカイトレインが開業、12月には空港とジャカルタ中心部を結ぶ初の鉄道路線が開通した(所要約1時間)。(濱田美紀

写真:新設されたスカルノハッタ国際空港の第3ターミナル

新設されたスカルノハッタ国際空港の第3ターミナル
10位 長期国債の格付けが投資適格水準へ

5月、米国の格付会社スタンダード&プアーズが、アジア通貨危機後はじめて、インドネシアの長期国債格付けを投資適格水準(BBB-)へと引き上げた。これによりフィッチ・レイティング社、ムーディーズ・インベスターズ・サービス社を含む三大格付け会社すべてがインドネシアを投資適格水準に位置付けたことになる。(東方孝之

写真の出典

セトヤ・ノファント国会議長
By Indonesian People's Representative Council (DPR) (http://www.dpr.go.id/akd/index/id/Tentang-Pimpinan) [Public domain], via Wikimedia Commons
アニス・バスウェダン現ジャカルタ州知事
By Government of Jakarta Special Region [Public domain], via Wikimedia Commons
バスキ・チャハヤ・プルナマ前ジャカルタ州知事
By Government of Jakarta Special Region [Public domain], via Wikimedia Commons
ジョコ・ウィドド大統領
By Government of Indonesia (Indonesia Govt Portal) [Public domain], via Wikimedia Commons
スカルノハッタ国際空港第3ターミナル
By Davidelit (Own work) [CC BY-SA 4.0 (https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0)], via Wikimedia Commons