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おしえて!知りたい!途上国と社会

 
第6回 発展途上国が先進国になるには何年かかりますか?

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050489

2018年9月

画像:質問

発展途上国のうち、どのくらいの国が先進国になれますか?

先進国になるには何年ぐらいかかるものなのでしょうか?

発展途上国が先進国になるには何年ぐらいかかるのか、というのは難しい質問です。世界の多くの国がいまも先進国になれていないからです。あと数年で先進国になる国もあるでしょうし、50年後も先進国になれない国があるかもしれません。

フェリペという人は、世界銀行の基準を参考に、世界の国々を低所得国(2010年時点ではケニア、バングラデシュなど)、下位中所得国(インド、インドネシアなど)、上位中所得国(マレーシア、中国など)、高所得国(アメリカ、日本など)に分けました(*1)。低所得国・下位所得国・上位中所得国までが発展途上国、高所得国が先進国にあたります。その上で、1950年から2010年を対象に、ある国の経済が発展してより豊かな所得カテゴリーにステップアップすることが、どのくらい難しいのか、平均でどのくらいの年数がかかるのかを調べました。

その結果、いくつかのことが分かりました。まず、1950年に82カ国あった低所得国のうち、2010年までに42カ国がより豊かな所得カテゴリーにステップアップしていることが分かりました。これを、「半分の国が経済発展できた」とみるか「半分の国しか経済発展できなかった」とみるかは難しいところです。  

フェリペは、1950年以降に低所得国を卒業して下位中所得国入りし、その後、上位中所得国にステップアップした国が9カ国あり、ステップアップにかかった年数の平均は28年であることを突き止めました。この9カ国には、中国や韓国、マレーシアやタイ、コスタリカなどが含まれます。また、1950年以降に下位中所得国を卒業して上位中所得国入りし、その後、高所得国になった国が23カ国あり、かかった年数の平均は14年であることが分かりました。この23カ国には、日本やシンガポール、フランスやドイツ、チリ、イスラエルなどが含まれます。

図 上位の所得水準にステップアップするのにかかった平均年数

図 上位の所得水準にステップアップするのにかかった平均年数

(出所)Felipe(2012)をもとに筆者作成。

つまり、経済発展をはじめた低所得国が、下位中所得国入りしてから上位中所得国を経て高所得国入りするまでに、平均的には28+14=42年かかっているといえます。ただし、これは発展に成功した国の平均なので、本当の平均はもっともっと長いことになります。ちなみに、1950年以降、低所得国からスタートして下位中所得国→上位中所得国→先進国と順調にステップアップし、中所得国のステージを突破したのは韓国と台湾の2つしかありません。多くの国が、中所得国から高所得国へステップアップするのに苦戦しているようにみえる現象は「中所得国の罠(わな)(Middle-income Trap)」と呼ばれ、近年注目を集めています。

ということで、フェリペの研究にしたがえば「中所得国入りした国が先進国入りするまでには平均42年かかる」というのが答えになります。ただし、低所得国のステージを脱することが出来ない国が約半分あり、中所得国のステージを突破するのも容易ではないとなると、発展途上国が先進国入りすることは、この数字以上に険しい道のりといえます。

回答・開発研究センター 熊谷聡(くまがいさとる)


参考文献

Felipe, J (2012). Tracking the Middle-Income Trap: What is It, Who is in It, and Why? Part 1. ADB Economic Working Paper Series No. 306. Asian Development Bank.

*1 フェリペの基準では、低所得国は1990年購買力平価(PPP)で2,000ドル未満、下位中所得国は2,000ドルから7,250ドル未満、上位中所得国は7,250ドルから11,750ドル未満、高所得国は11,750ドル以上。