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コラム

おしえて!知りたい!途上国と社会

第1回 途上国の企業が先進国に進出することもあるのですか?

PDF版ダウンロードページ:http://hdl.handle.net/2344/00050158

2018年2月

画像:質問

先進国の企業が、市場や生産拠点を求めて発展途上国に進出するとよく耳にします。

逆に、発展途上国の企業が日本やアメリカに進出することもあるのでしょうか?

海外に行くというのは、なかなか大変なことです。旅行などで海外に行ったときに、言葉が通じなかったり習慣が違ったりして、現地で思うように事が運ばない経験をした人も多いのではないでしょうか。

企業も同じです。海外で生産をするなら、工場を建て、機械や設備を用意し、現地で人をやとって訓練し、材料や部品がきちんと運び込まれるしくみをつくらなければなりません。法律や習慣が日本とはちがう外国で、これらをやりとげるのは簡単ではありません。ですから、海外での事業をうまく進められるのは、たくさんの資金やすぐれた技術を持つ有力な企業だと考えられていました。

現実に、これまでは、いくつもの国に拠点を持って活動する「多国籍企業」は、先進国の企業が中心でした。ところが最近では、発展途上国の多国籍企業が増えています。2015年の「外国直接投資」(外国で長期的に経営を行うための投資)の出し手をみると、第一位はアメリカ、第二位は日本ですが、第三位に中国が入っています。上位20カ国には、中国のほか、香港、シンガポール、韓国、ロシア、チリが含まれます。

図 海外直接投資額(2015年の上位10カ国)

では、発展途上国の企業はどこに進出しているかというと、アメリカや日本のような先進国への進出、アジアなどの発展途上国への進出という両方のパターンがみられます。

発展途上国の企業にとって、発展途上国に進出することには、母国と似たような環境でビジネスができるという利点があります。所得が低く、品質やブランドにもさほどこだわらない消費者が多い進出先であれば、安さを売りにした製品が受け入れられやすいでしょう。文化や慣習が似ている近隣の国々なら、さらに活動しやすいと考えられます。たとえば中国企業は、近隣のアジアの国々や、多くの中国系移民が住む国に投資を行う傾向が強いといわれます。

これに対して、先進国への進出には、母国とは大きく異なるビジネスのやり方や文化、高度な製品を求める消費者への対応が求められます。ただし、技術やブランドを強化したいと考えている発展途上国の企業にとって、これは大きな魅力となります。最近、ファーウェイというスマートフォンのブランドをよく見かけるようになりました。これは、中国の「華(ファー)為(ウェイ・)技術(テクノロジーズ)」という企業のブランドです。この企業は、ヨーロッパなどの先進国を含め世界各地で事業を展開しています。

回答・地域研究センター 藤田麻衣(ふじたまい)

図の出所

United Nations Conference on Trade and Development (UNCTAD), Word Investment Report 2016, Geneva: United Nations Publication, p.10.enses/by-sa/3.0)], via Wikimedia Commons

【連載目次】

おしえて!知りたい!途上国と社会