イベント・セミナー情報

APLセミナー(アジ研パワーランチセミナー)

Generals in defense of allocation: Coups and military budget in Thailand

APLセミナー(アジ研パワーランチセミナー)は、アジア経済研究所の研究者のみならず、外部の研究者、学生の方にも参加いただけるリサーチワークショップで、お昼の時間にアジア経済研究所(海浜幕張)の会議室で開催しています。

研究所内外における研究者が研究成果、研究活動の中間発表を行うほか、発表者と参加者、あるいは参加者相互のディスカッションを行います。テーマ、講師に応じて日本語あるいは英語での発表、議事進行となります。
——参加ご希望の方は、研究所受付にて「APLセミナーに参加」と伝え、開催場所まで直接お越しください。——
セミナー終了後、受付で渡される「面会確認票」にセミナーの司会者から署名を得てください。
なお、ランチとありますが昼食は出ません。

予告なく時間の変更や中止のケースもあります。中止や変更の連絡は本ウェブサイトにて行いますので、当日ウェブサイトにてご確認ください。

お問い合わせ先


ジェトロ・アジア経済研究所 APL幹事
E-mail:APLE-mail

開催日時

2017年7月28日 (金曜) 12時30分~14時00分

会場

要旨

クーデターは、軍事力などの非合法的な手段により政治の実権を奪う、民主主義的手続きからは逸脱した行為である。これは極めて政治的な行動ではあるが、同時に、クーデター成功後の経済政策を通じて国民経済にも多大な影響を及ぼす。特に、クーデターが予算配分に与える影響については、パネルデータを利用した多くの先行研究が蓄積されており、近年では、軍は予算獲得を目的としてクーデターを行うとの仮説に基づいて、クーデターは軍事予算の増額に繋がるとの知見が得られている。

本研究は、タイにおけるクーデターと軍事予算の配分の関係を、政府予算データから分析する試みである。タイでは民主主義への移行後もクーデターが繰り返し行われているが、この不幸な歴史は逆に実証研究の機会を提供していることにもなる。1948年から2014年までのサンプル期間内に15回のクーデターが試みられ、軍人を中心とした政権樹立、憲法の停止などの形でそのうち9回が成功した。

軍事予算と予算総額双方の増加・減少率に関する回帰分析により、クーデター後には予算全体の変化により説明される程度を超えて、軍事予算が9~23%増加することが確認された。そして、この影響はクーデター直後の年度に限定され、クーデター後2年目、3年目の予算には影響は見られない。また、陸海空三軍間での予算配分においては、陸軍の予算シェアの変化が、クーデター直後には陸軍にとって有利な動きをすることが、平均の差に関するt検定により確認される。三軍におけるその支配的な立場から、陸軍の参加無しにはクーデターの成功は見込まれない。クーデター後の予算配分決定の検証結果は、三軍の中で陸軍の発言力が強いと考えられることと整合的である。

タイ国軍がクーデターを実行する際には政治家による汚職の一掃、王室の護持、国家の安定などの理由を挙げることが多い。しかし、タイ政府予算分析結果からは、実際には軍へのより大きな予算配分を求めるという動機がクーデターの背後に潜んでいる可能性も否定できない。


This paper investigates the effect of coup d'état on government defense expenditure in Thailand with 1948-2014 data. Regression analyses of the relationship between the total and defense budget reveal that coups result in larger defense budget in the year immediately following the coup. Among the branches of the armed forces, the army gained in their allocation out of the total defense budget after coups. These results imply that coup leaders have made use of their acquired executive power to direct greater budget for the benefits of their organizations.

講師

川浦 昭彦(同志社大学)

司会

久保 公二

使用言語

日本語