southafricaMassmart Holdings Limited マスマート・グループ

アフリカ成長企業ファイルは2008年度~2009年度に実施した調査事業の成果です。

設立年

1990年

売上高

431億2,870万ランド

営業利益

19億5,060万ランド

従業員数

2万8,162人

会社概要と沿革

南ア企業のマスマート・グループは、以下の4部門で量販店を展開している。

(1) マスディスカウンター(日用雑貨、93店舗)
(2) マスウェアハウス(倉庫型バルク販売、13店舗)
(3) マスビルド(日曜大工用品、71店舗)
(4) マスキャッシュ(食料品卸売り、79店舗)

マスマートは90年の設立以来、量販店の買収を繰り返しながら、事業を拡大させていった。2000年にはヨハネスブルグ証券取引所に上場し、売上高は同年の104億ランドから09年には4倍の431億ランドまで伸びた。営業利益は2000年の2億150万ランドから09年には19億5,060万ランドと格段に経営を効率化させている。同社は事業多角化を目的とした買収による成長戦略のほか、店舗数拡大で得られる規模の経済による経営効率化を目指している。店舗は南ア国内に232店、南ア以外のアフリカ14カ国に24店ある。09年の南ア国内店舗数の増減をみると、低所得者向けのマスキャッシュは地方都市やタウンシップ(旧黒人居住区)への進出で店舗数は前年比8店増となっているが、中高所得者層向けのマスディスカウンターやマスウェアハウスはそれぞれ3店増、増減ゼロとなっており、国内の店舗数は将来的には頭打ちになりそうだ。

国内市場飽和でアフリカ進出

日用品量販店マスディスカウンターのアフリカ担当部長マーク・ターナー氏は、「国内販売も黒人中間層の台頭を背景に順調に伸びているが、アフリカ市場はそれを上回る成長ぶり。競合も少なくハイリターンが狙える」とする。マスマート・グループはアフリカ進出において、マスディスカウンターが運営する量販店「ゲーム」を主力店舗としている。ゲームで販売する日用品や小型家電などは単価が安いため、損失が出たとしてもその規模を比較的小さく抑えられるからだ。ゲームの店舗展開が成功すれば他の量販店の進出機会も検討する。

同社は今後5年間でゲームのアフリカ店舗を現在の2倍にする計画だ。南ア以外のアフリカの現在の市場は、30~40年前の南アの状況に近いという。店舗を構える小売店が少なく路上での買い物が主流で、国によってはショッピングセンターという概念を知らない消費者もいる。このような国では、単独で1店舗だけポツンと建てるのではなく、複数の小売店と連携してショッピングセンターに連なる1店舗として進出する方が集客しやすいという。幸い、他の南ア企業もアフリカ進出を加速させており、スーパーマーケットやファーストフード店などとの連携機会が増えたことはビジネスリスクの軽減につながっている。

ナイジェリアでは撤退も検討

海外展開を加速させる同社だが、ナイジェリアでは撤退を考えるほどの苦労があった。ナイジェリアに進出したのは2006年。出店にあたって政府から命じられたのは、店舗の7割の商品を現地調達すること。このため、ナイジェリア中を回って調達先を探した。新たに生産を委託した商品もある。例えば、家具が見つけられないときは、ナイジェリア国内の材木屋に行って商品製造を委託した。この結果、商品調達コストは、当初輸入品で想定していた金額の何倍にも膨れ上がった。現地で調達できる商品には限界があり、商品内容の4分の3は南アの店舗とは異なる。残る3割の輸入品も棚に並べるのは容易ではなかった。まず、港の混雑によりコンテナが降ろせない。平均すると90日程度かかるが、毎回の所要時間は読めず在庫調整は不可能だった。また、税関からは賄賂を執拗に要求された。書類の記入ミスがあると偽装輸入だとして、多額の罰金を取られた。税関はマスマートという企業の存在を知らず、税関との関係構築には時間を要した。マスマートは長い時間をかけて、自分たちが上場企業であること、賄賂や密輸に対して厳しい社内倫理規定があることなどを繰り返し税関に説明した。そうするうちに、当初は6カ月かかった通関の時間が徐々に短縮されていった。こうして改善を続けるうちに、初年度には絶望的だった財務状況が好転し、2年目を過ぎた頃からようやく軌道に乗り始めた。

問題が多いのはナイジェリアだけではない。93年に進出したボツワナとナミビアは南アの延長線上という位置づけで問題はなかったが、ザンビアに進出した頃から次々と難題を抱えることになった。まず土地開発のトラブルが発生した。地元の土地開発業者が見つからない、なんとか見つけても納期遅延などの契約不履行は当たり前、ショッピングセンターのイメージを知らない業者が勝手に建物を作ってしまう、などだ。トラブル回避策として、現在では土地開発は自社で請け負う方針にした。このため、出店の準備には最低でも3年はかかるという。アンゴラは準備開始から7年が過ぎたが、法的問題が多く、未だに完成していない。

それでもターナー氏は、小売店が皆無に等しいアフリカ市場では開拓の余地は大きいと言い切る。競合他社より先に進出すれば、価格や保証制度などで新たな水準を作れるというメリットもある。市場に関するデータが欠乏しており顧客の実態や市場規模は測れないが、これまで進出した市場での経験値や、人口増加と若年層の割合の高さ、雇用数の拡大などを考慮すると、アフリカ市場は長期的に取り組むに値する有望市場だとする。

(情報ソース)

  • 2009年12月16日Mass Discounters, Director-Africa, Mark Turner氏インタビュー
  • マスマート・ホームページ  http://www.massmart.co.za